研究課題/領域番号 |
18H05917
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 賢之介 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (20821606)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | エトリンガイト / 二次生成 / C-S-H / モノサルフェート / 膨張 |
研究実績の概要 |
本年度は,硫酸イオン存在下でエトリンガイトへと変化するモノサルフェートにC-S-Hが共存した場合における,エトリンガイト二次生成の促進現象について,化学組成およびAl結合状態に着目した検討を行うことにより,そのメカニズムを明らかにした. 具体的には,モノサルフェートおよび,化学組成であるCaO/SiO2モル比が異なるC-S-H,水酸化カルシウム,非晶質シリカ,ケイ酸アルミン酸カルシウム水和物(C-A-S-H)などの共存物質を純薬合成によって作製した.その後,合成モノサルフェートにC-S-HやC-A-S-Hなどの各種共存物質を質量比1:1として混合し,硫酸ナトリウム水溶液を用いて練り混ぜを行った.練り混ぜ後の試料は,粉末X線回折(XRD)によりエトリンガイト量を定量し,また27Al-NMR測定によって試料中のAlの存在形態を評価した. その結果,C-S-Hが共存した場合では,エトリンガイトの二次生成量が顕著に増大した.しかし,水酸化カルシウムや非晶質シリカを単独で共存させた場合や,その両者をC-S-Hと同様の化学組成で混合して共存させた場合では,エトリンガイトがほとんど二次生成しなかった.このことから,エトリンガイトの二次生成は,CaおよびSiを単純に共存させても促進されないことが明らかとなった. また,C-S-Hを共存させた試料の27Al-NMR結果から,練り混ぜによって4配位のAlを有するC-A-S-Hが形成されたことを確認した.初めから合成C-A-S-Hを共存させた場合では,C-S-H共存の場合と比較してモノサルフェートの消費が抑制された一方で,エトリンガイト二次生成量は同等であった.以上の結果から,エトリンガイトは4配位のAlから二次生成しやすく,C-S-Hは構造中にAlを置換して4配位Alを形成することによって,エトリンガイトの二次生成を促進すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-S-Hの共存がエトリンガイトの二次生成を促進する現象は,①エトリンガイトが4配位Alから生成されやすいこと,②C-S-Hは構造中のSi鎖にAlを置換して4配位Alを形成することに起因していることを見出し,エトリンガイトの二次生成メカニズムの一端を明らかにすることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は,合成モノサルフェートに合成C-S-H等の各種物質を共存させ,硫酸ナトリウム水溶液によって練り混ぜを行い,硬化した後の膨張量(体積変化)を測定することによって,C-S-H等の共存物質が二次生成したエトリンガイトの膨張性状に及ぼす影響を明らかにする.また,その際のエトリンガイトの二次生成量の定量および,二次生成した際の結晶形態の観察を行う.上記の検討結果および,平成30年度の結果を踏まえ,各種物質が共存した際のエトリンガイトの二次生成による膨張性状を予測する手法の構築を行う予定である.
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