研究課題/領域番号 |
18H05922
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
岸 正敏 創価大学, 理工学部, 助教 (00824020)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 循環型社会 / バイオ炭 / メタン発酵消化液 / 緩速ろ過 / 微細藻類 |
研究実績の概要 |
メタン発酵消化液の栄養塩を用いた微細藻類の培養は、汚水処理の経済性を向上させる重要な技術であるが、消化液が含む微生物・重金属などの汚染物質が、幅広い藻類生産への実用化を妨げている。バイオ炭はその吸着能からろ過処理に用いることで栄養塩を残存させたまま消化液を清澄化できる可能性がある。そこで本研究ではバイオ炭を用いて、栄養塩を残存させたまま夾雑物質の選択的な除去が可能かを明らかにすることを目的とした。本年度は異なるバイオ炭を用いてろ過試験を実施し、焼成温度や流れの向きが微生物・有機物・重金属の除去特性に与える影響を評価した。 バイオ炭の原料は竹チップを用い、350°C(BC350)と800°C(BC800)で製炭した。比較として活性炭(AC)を用いた。実験系列は計4系列で、流向が上向きのBC350、BC800、AC up区と、追加実験として流向が下向きのAC down区を実施した。これらのバイオ炭を長さ17cmの小型容器に10cmの高さで充填し緩速ろ過を行った。 その結果、すべての系列において固形物(50~60%)と溶存有機炭素(6~83%)が除去された。消化液中の大腸菌数はdown区では供給水と比較して約90%が除去されていたが、up区ではむしろ増加する結果となった。これは、down区では酸素の流入により好気性菌がバイオフィルムを形成して大腸菌群を除去したが、up区では嫌気性の大腸菌が増殖したと考えられる。栄養塩はアンモニアがほぼ100%、リンは65~90%残存した。重金属は、活性炭のみ鉛の50%程度の除去が見られたが、バイオ炭では除去が見られなかった。 以上のことからバイオ炭を用いた消化液のろ過により栄養塩を残存させたまま微生物・固形物・溶存有機炭素の除去が可能であることがわかった。一方で上記の処理能力には向上の余地があり、重金属対策が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なるバイオ炭を用いた微生物・懸濁態固形物・溶存有機炭素等の除去効果を明らかにすることができたことで、概ね計画を達成した。計画では処理性能が悪い場合に2018年度中に砂ろ過を試験する可能性も示唆したが、当初計画になかった供給の向きの検討をすることで処理性能が向上したことから、計画にあった問題は概ね解決されたと考える。砂ろ過に関しては2019年度にバイオ炭との性能比較のために実施する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
バイオ炭を用いた消化液のろ過により栄養塩を残存させたまま微生物・懸濁態固形物・溶存有機炭素の除去ができた一方で、微細藻類培養のためには処理能力を向上させる必要がある。例えば、大腸菌は最大90%が除去されたが、微細藻類を食品に用いるためにはこれより数オーダー高い除去率が望ましい。これら汚染源が完全に除去されなかった理由は大きく分けて2つあると考えられる。 第1にろ過塔の規模である。2018年度は複数のバイオ炭を比較するために高さ10 cmという小規模で実験を行った。他方、一般的な緩速砂ろ過では高さ50~120 cm程度で処理が行われている。そのため供給水とろ材の接触が短く、粒子やイオンの吸着・分解が十分に行われていなかった可能性がある。したがって2019年度は高さ150 cmのカラムにろ材を70 cm充填して実験を行い、その処理性能を評価する。 第2にバイオ炭のろ材としての目の粗さである。2018年度に行った実験ではバイオ炭および活性炭は2 mm程度に粒径を揃えた。緩速砂ろ過では通常粒径0.3~0.45 mm程度の砂を用いる。この違いにより、粒子の除去性能や、均質なバイオフィルムの形成による微生物除去性能が異なっていた可能性がある。2019年度は砂ろ過との性能の比較を行うことで、バイオ炭のろ材としての性能を評価する。 以上の実験を行うことで、バイオ炭の緩速ろ過材としての性能を評価し、微細藻類培養に向けた消化液清澄化の実現化に向けた方策を検討する。
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