研究課題/領域番号 |
19K21091
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
岸 正敏 創価大学, 理工学部, 助教 (00824020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 循環型社会 / メタン発酵消化液 / バイオ炭 / 緩速ろ過 / 微細藻類 |
研究実績の概要 |
メタン発酵消化液の栄養塩を用いた微細藻類の培養は、汚水処理の経済性を向上させる重要な技術であるが、消化液が含む微生物・重金属などの汚染物質が、幅広い藻類生産への実用化を妨げている。そこで本研究では砂濾過処理・バイオ炭吸着という簡便な手法を用いて、栄養塩を残存させたまま夾雑物質の選択的な除去が可能かを明らかにすることを目的とした。昨年度の結果ではバイオ炭濾過によって有機物などが除去されたが、大腸菌などの除去が不十分であった。そこで今年度は砂濾過との組み合わせによる除去能向上を図った。 はじめに砂濾過のみで消化液の夾雑物質除去能を評価した。供給水には嫌気消化汚泥の遠心分離上澄みを7倍希釈したものを使用した。砂濾過には有効径0.3~1.0 mmの砂を70 cm充填した円筒カラムを用いた。22日間の運転の結果、固形物除去率が平均14%という低い値となった。これは遠心分離上澄みに比較的小さな粒子のみが残存しており、濾過砂の目合をすり抜けたと示唆された。 そこで、続いて砂濾過の前段に好気生物処理を組み合わせた処理を検討した。好気生物処理で用いた順次回分式活性汚泥法は曝気と汚泥沈降のサイクルを繰り返すことで、消化液中の固形物を分解または凝集・沈殿させ、細かい粒子を取り除くことのできる手法である。その結果、固形物除去率は大きく向上し、好気処理で61%、砂濾過で65%、全体として89%となった。さらに、得られた処理液を活性炭で処理したところ、溶存態有機物約50%除去、有色溶存物質約70%除去、病原菌約90%除去、という結果が得られた。 以上のことから、好気生物処理、砂濾過処理、バイオ炭処理の組み合わせで良好な清澄化が得られることが明らかとなった。今後の課題として、消化液の性状によって好気生物槽の処理性能が不安定となったため、消化液性状に合わせた適切な処理について検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に他の処理方法との組み合わせの必要が確認されたため、当初計画から変更して好気生物処理および砂濾過処理と組み合わせたバイオ炭濾過の実験を行った。そのため今年度実施予定であったバイオ炭のみの長期運転は実行しなかったが、それと同規模以上の研究結果が得られた。そのため、進捗は「おおむね順調に進展」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
好気生物処理・砂濾過・バイオ炭を組み合わせた消化液の清澄化により栄養塩を残存させたまま微生物・懸濁態固形物・溶存有機炭素の除去ができた一方で、処理の安定性には懸念が残る。例えば、消化液の希釈率を7倍から3倍へと小さくして負荷量を増加させたところ、好気生物槽の汚泥沈降性が低減し、固形物除去率が急激に悪化した。これにはいくつかの原因が考えられ、例えば (1) 消化液中の低い易分解性有機物濃度による汚泥活性低下、(2) 糸状微生物の増殖によるバルキング(汚泥沈降性低下)の発生 などが示唆された。今後は異なる性状の消化液で試験をするとともに、好気生物処理、砂濾過やバイオ炭濾過の形状を工夫することで、処理の安定性を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者と共に参加を予定していた研究集会「水圏クロロフィル蛍光に関する知識統合と研究戦略-2」、「日本水環境学会年会」および「日本藻類学会大会」がCOVID-19の影響で中止となったため、やむを得ず補助事業期間の延長を申請した。 2020年度使用計画については、引き続き学会への参加は難しい状況であるため、2019年度の研究実施で明らかとなった本研究課題の追加課題を実施するために物品費として使用する。
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