世界の廃棄物排出量は増加を続けるが途上国ではその多くが処理されず環境破壊に繋がっている。メタン発酵は有機性廃棄物をエネルギーに変換できるが、排水(消化液)の処理が問題となる。一方消化液に含まれる栄養塩で高品質の微細藻類を生産できれば利益を生み経済的インセンティブとなりうる。しかし、現状では消化液が含む病原菌・重金属などの汚染物質が、幅広い藻類生産への実用化を妨げている。そこで本研究では途上国で実施しやすい簡便な技術を用いて栄養塩を残存させたまま夾雑物質の選択的な除去(清澄化)が可能かを明らかにすることを目的とした。実験として大きく①バイオ炭ろ過と②前段処理との組み合わせを実施した。 ①バイオ炭ろ過実験では、竹チップ焼成温度2条件に活性炭を加えた3条件で比較した。その結果、全系列において栄養塩をほぼ残存させたまま、固形分や溶存有機物が除去できた。しかしその除去率は60%程度であり、大腸菌の除去効果も低く、バイオ炭単独での処理は不十分であった。 そこで次に②前段処理を組み合わせた処理の効果を検証した。はじめにバイオ炭ろ過の前段に砂ろ過を組み合わせ、夾雑物質除去能を評価した。その結果、砂ろ過の固形物除去率が平均14%という低い値となった。これは用いた消化液が下水汚泥由来かつ遠心分離上澄みを用いており、小さな粒子のみが残存していたためにろ過砂の目合をすり抜けたと示唆された。 そこで、続いて砂ろ過の前段に粒子凝集作用を持つ好気生物処理を組み合わせた。その結果、固形物除去率は大きく向上し、好気処理で61%、砂ろ過で65%、全体として89%となった。さらに、得られた処理液を活性炭で処理したところ、溶存態有機物約50%除去、有色溶存物質約70%除去、病原菌約90%除去、という結果が得られた。本研究により好気生物処理、砂ろ過処理、バイオ炭処理の組み合わせで良好な清澄化作用が得られることが明らかとなった。
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