近年、断層近傍で観測される長周期パルス性地震動に対する建築構造物の地震被害が懸念されており、このような長周期パルス性地震動に対して効率的かつ高精度に地震応答を評価する方法が求められている。これらの長周期地震動では、部材の損傷や塑性変形によって変化した建物の固有周期と地震動の長周期成分が一致する「極限的」なケースにおいて、建物の変形が大きく増幅する現象が知られている。本研究課題では、断層近傍地震動(長周期パルス性地震動)を対象として、このような最悪ケースにおける多層弾塑性構造物や多自由度モデルの地震応答を効率的に評価する方法を展開する。さらに、極限的な地震動入力およびそれに対する弾塑性構造物の地震応答を耐震設計に応用する方法を展開する。 平成30年度に展開した断層近傍地震動における指向性パルスをモデル化したトリプルインパルスに対する粘性減衰を有する弾塑性1自由度系の極限応答の近似閉形解を導出した。令和元年度の研究では、平成30年度に展開した完全弾塑性1自由度系のトリプルインパルスに対する極限応答の閉形解と等価1自由度系への縮約を用いて、断層近傍における指向性パルスに対する多層モデルの極限応答の簡易評価法を展開した。さらに、骨組モデルや多自由度弾塑性モデルに対するトリプルインパルスの極限性を明らかにし、上記の簡易評価方法の妥当性について検証した。また、平成30年度の多層不整形立体構造物を対象とした地震入力エネルギーを最大にする極限的ダブルインパルスの最悪な地震動入力方向の評価方法を応用して、不整形立体骨組の極限応答を効率的に低減可能な最適ダンパー配置を明らかにした。
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