研究課題/領域番号 |
19K21098
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
西川 亮 立教大学, 観光学部, 助教 (70824829)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱海 / 温泉 / 風致地区 / 1960年代 |
研究実績の概要 |
我が国では、1919年の都市計画法制定以来、大都市から地方都市まで都市計画が波及していった。特に、1933年都市計画法改正により温泉地や海水浴場等の資源を有する小規模町村でも都市計画法適用が認められるようになり、全国の観光地で自然風致を保護するため風致地区が指定されていった。ところが、戦後、1960年代にマス・ツーリズムの隆盛と共に観光開発が全国的に生じ、自然環境や歴史的環境が破壊されていった。では、戦前から観光地において指定されてきた風致地区は、1960年代の観光開発に対してどう影響を与えたのか。 2020年度は、特に観光開発によって風致地区が毀損された静岡県熱海市を対象に、1960年代の観光開発に対する都市計画行政の対応を、風致地区行政、都市計画行政および観光行政の観点から分析した。これまでの熱海研究では、高度経済成長期の熱海市の急激な都市化は批判の対象として捉えられ、背景に計画不在であることが指摘されてきた。その結果、熱海市の風致地区毀損は、観光開発による地域環境の破壊という構図で捉えられてきた。しかし、1960年に熱海市が発表した総合開発計画(通称、高山プラン)と連動させて当時の風致地区行政の動きを解明した結果、高山プランを軸に、観光客相手に事業を営む事業者兼住民や行政が主体的に都市形成に関わってきた歴史を描き出すことに成功した。これらは、既往の熱海発展史では描かれてこなかった視点であり、観光地熱海の高度経済成長期の変容を再考させる契機ともなりうると結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市計画学会に査読付き論文を発表するなど、成果の公表も行っており、おおむね順調に進展していると判断した。ただし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、東京近郊の地域での調査に限定せざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況を見て、研究対象地の変更も検討する必要がある。当初より、別府を対象地として想定し、準備を進めてきたが、状況によっては、これまでの研究蓄積のある熱海市を対象に、より深くデータを収集し、分析をする方向に転換する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、都内から研究対象地(静岡県熱海市)への訪問回数を減らす必要が生じ、旅費を十分に活用できなかった。研究対象地への訪問が可能になったら速やかに実施し、その旅費に充当する。引き続き研究対象地への訪問が十分に行えない場合は、文献購入費として使用する。
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