研究課題/領域番号 |
18H05933
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
山本 佳嗣 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (50823738)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 自然換気 / 自然換気併用ハイブリッド空調 / エネルギーシミュレーション / コミッショニング |
研究実績の概要 |
当該年度には、まず自然換気導入建物における自然換気併用ハイブリッド空調(以下ハイブリッド空調)の事例調査を行い、設計や運用の実態について把握した。更に建築物総合シミュレーションツールBEST専門版を用いて、自然換気で処理が不足する冷房負荷に対して最低限の空調でアシストした場合の省エネ効果についてエネルギーシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、冷水コイルを用いた機械空調を併用することによって、熱源の部分負荷運転時間が長くなる傾向にあり、熱源システムの効率が低下する傾向にあることが分かった。この課題に対して、空調機による外気送風運転(外気冷房運転)とゼロエナジーバンド設定を組みあわせた制御により、低負荷時の冷水コイル使用時間を最小化する制御法を考案した。しかし、考案した制御法は確実な省エネに繋がる反面、室内温熱環境の制御性や執務者の快適性に与える影響を確認する必要があると思われた。そこで自然換気設計を導入した竣工直前の実物件を対象として、このハイブリッド空調制御時の室内温熱環境について実測調査を行った。その結果、中間期の快晴時において、考案したハイブリッド空調で概ね良好な温熱環境が実現できていることが確認され、自然換気時とハイブリッド空調時の室内環境の違いも明らかとなった。これらの当該年度における実測調査の成果は建築学会大会の発表論文として投稿している。 今後の課題としては、竣工前の実測調査の結果を踏まえ、執務者や内部発熱が存在する実運用段階においてハイブリッド空調を試行し、その実効性や課題を明らかにする必要がある。また、事例調査の結果やシミュレーション検討結果を整理し、最終的には細かい制御条件を含めた自然換気併用ハイブリッド空調の適切な制御法を提案することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の達成目標として掲げていた2つの課題のうち、課題1)自然換気導入建物の空調システムと制御方法の実態把握 については調査を完了した。また、課題2)シミュレーション解析による統合的省エネ制御法の導出については、省エネルギー効果としての課題を明らかにし、その解決法の一つとして外気冷房を活用したハイブリッド空調の運用法を導き出した。本来は更にシミュレーション解析を精緻に行い、設定値も含めた制御法を導出する予定であったが、自然換気の設計がなされた環境配慮型庁舎において、実際に運用法を試行できる機会を得たため、実測調査を通して実効性の高い制御法や設定値を検討する方針とした。来年度に予定していた実測調査を当年度に行うなど、若干の計画修正はあったが目標としていた進捗状況は十分に達成することができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、執務者がいる実運用条件にて再度ハイブリッド空調の運用方法を試行し、室内温熱環境、省エネルギー効果、アンケート調査による執務者の快適性について実測調査を行う。通常の機械空調で運用するフロアとハイブリッド空調で運用するフロアの比較や室内外条件によって制御方法を変化させ、快適性アンケート結果との関係を分析する。これらの実測調査により自然換気からハイブリッド空調、機械空調への切り替え条件を明らかにし、設計時やコミッショニング時の設定値の最適化に役に立つ成果とする。 実物件に適用した制御法について課題が残る場合はシミュレーション解析等により改善点を検討し、実効性のあるハイブリッド空調制御法の提案を目指す。更に、本年度行った事例調査の結果やシミュレーション解析の結果を整理し、設計・コミッショニングに有用な資料として公開する。
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