当該年度は研究最終年度であり、シミュレーション検討により自然換気許可条件、空調制御条件が自然換気の省エネルギー性能に与える影響について感度分析を行った。また、シミュレーションより得られたハイブリッド空調の運用法を実物件において試行し、その快適性と省エネルギー性能について明らかにした。また、自然換気やハイブリッド空調の設計実態を把握するために自然換気設計事例と実運用データの収集、データベース化を行った。 具体的には、最初にBEST専門版を用いた省エネルギー効果に関する検討を行い、熱源に部分負荷処理を行わないようにするためには冷水コイルを使用しない外気冷房運転と自然換気を組み合わせたハイブリッド空調が有効ではないかと考え、実物件での実測調査にてその効果を検証した。 実測調査に関しては、2018年に竣工した最新の環境配慮庁舎において、通常の機械空調を利用した外気冷房で運用する10階とハイブリッド空調で運用する11階の比較を行い、自然換気性能・室内温熱環境の実測結果と執務者224名に対する快適性アンケート調査との関係を分析した。アンケート結果より、ハイブリッド空調を行った11階の快適性は10階を上回っており、10階と比較した11階の空調エネルギー削減率は18.8%であった。温熱環境物理量(SET*)とアンケートによる温熱環境許容率を分析した結果、温熱許容幅の大幅な拡大は確認できなかったが、SET*22~27℃までの許容率は80%であることが明らかとなり、運用の目標値が得られた。その他、外気冷房併用時の室内圧が自然換気性能に与える影響など、ハイブリッド空調運用上の留意点について整理を行った。 これらの検討により、ハイブリッド空調を前提とした自然換気システムの設計や既存建物の運用コミッショニングに有用な知見が得られたと言える。
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