研究課題/領域番号 |
18H05936
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 英恵 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60733920)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | ナノグラニュラー / 楕円 / 磁気誘電効果 / 磁気抵抗効果 / 誘電体 / 高周波 |
研究実績の概要 |
次世代の多機能電子デバイス用の材料開発には、複数の機能性を同時に併せ持つ(電気-磁気、磁気-誘電、光-磁気特性など)高効率でエネルギー変換可能な「複機能磁性材料」の開発が求められる。申請者らのグループでは、磁性ナノ粒子が誘電体マトリクス中に分散する「ナノグラニュラー薄膜」により、室温における磁場変化で誘電率εが変化する「トンネル磁気誘電(TMD)効果」および磁場変化で透過率Tが変化する「トンネル磁気光学(TMO)効果」を新たに見出した。 しかしながら、これらの特性発現は、球状の磁性粒子が均一分散した膜でしか報告されていない。 本研究は、粒子形状を「縦長楕円形」および「横長楕円形」にしたナノグラニュラー膜を作製し、TMD効果、TMO効果およびトンネル磁気抵抗(TMR)効果などの「複機能磁性」に与える粒子形状の影響を体系的に調べ、新機能・高機能「複機能磁性材料」を開発することを目的とする。平成30年度は1)縦型(膜面垂直)の楕円形状Co粒子を内包するCo-SiO2ナノグラニュラー膜の高周波軟磁気特性、および2)横型(膜面内)の楕円形状Co粒子を内包するCo-BaF2膜の高周波TMDおよびTMR効果について構造との関連を調べた。 1)縦型(膜面垂直)の楕円形状Co粒子を内包するCo-SiO2ナノグラニュラー膜は、5GHz帯まで損失が小さく極めて良好な軟磁気特性を示した。 2)Co-BaF2系ナノグラニュラー膜をタンデムスパッタ法で創製し、その構造とTMDおよびTMR効果を調べた。分散形態および密度を変化させたところ、35MHz帯において6.0%のTMD効果および5.9%のTMR効果を一つの膜で実現した。磁性金属粒子間のスピン依存トンネル電流ならびに孤立した磁性粒子ペアの間のスピン依存電荷分極の両方が関与していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする楕円形状のCo粒子を内包するナノグラニュラー膜の作製に成功し、さらに高磁性粒子密度な膜において、TMD効果およびTMR効果を両立する複機能性を発現することを明らかにした。上記の知見は当初のひとつの複機能性発現の目標を上回り、現在、高密度なCo粒子の分散と複機能性の関係について詳細な構造解析を進めている。一方で、粒子形状を横型(膜面内)の楕円形状に変化させた場合では2%のTMD効果しか得ることが出来なかった。この原因を明らかにし(今後の推進方策で記述)、次年度は楕円形状による相乗効果を検討する。楕円形状粒子を内包するナノグラニュラー膜の作製に成功し、複数の磁気機能性を実現できたことから、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成30年度に引き続き、縦型(膜面内)および横型(膜面垂直)にCo粒子を楕円形状へ変化させたナノグラニュラー膜のTMD効果およびTMR効果を他の組成系でも調べる。横型(膜面内)の楕円形状のCo粒子を内包するCo-BaF2膜でTMD効果が小さい原因として膜の誘電特性を膜面垂直方向でしか評価していないことが挙げられる。この場合、スピン依存分荷電極のみに起因した小さなTMD効果しか得られない。そのため、電極を膜の両側面に配置した微細加工を行い膜面内方向の誘電特性を検討する。また、現在、高密度なCo粒子の分散と複機能性の関係について詳細な構造解析を進め、膜のグラニュラー形成過程やその条件等について明らかにしていく。
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