研究課題
次世代の多機能電子デバイス用の材料開発には、複数の機能性を同時に併せ持ち、かつ高効率でエネルギー変換可能な「複機能磁性材料」の開発が求められる。磁性ナノ粒子が誘電体中に分散する「ナノグラニュラー薄膜」は、室温における磁場変化で誘電率εが変化する「トンネル磁気誘電(TMD)効果」が知られるが、球状の磁性粒子が均一分散した膜でしか報告されていない。本研究は、粒子形状を「縦長楕円形」および「横長扁平形」にしたナノグラニュラー膜を作製し、TMD効果およびトンネル磁気抵抗(TMR)効果などの「複機能磁性」に与える粒子形状の影響を体系的に調べ、新機能・高機能「複機能磁性材料」を開発することを目的とした。令和2年度は、1) Co相を層状から横扁平形状ナノ粒子まで変化させたCo-BaF2膜、ならびに2)ナノ粒子形状を横扁平形状から縦長楕円形状まで変化させたCo-SiO2膜を作製し、それぞれタンデムスパッタ法で粒子形状および粒子配列を制御するための成膜条件を明らかにした。1)横扁平ナノ粒子が面内に配列するCo-BaF2膜は、粒子の密度および間隔が面内・面直で異なるために、面内(扁平方向)には低電気抵抗、面直(短軸方向)には高電気比抵抗を示す。電気抵抗値の違いから、面内にTMR効果、面直にはTMD効果と、ひとつの膜で性質の異なるトンネル効果を得ることに成功した。2)ナノ粒子形状を横扁平から縦楕円に変化させたCo-SiO2膜は、粒子が横扁平および縦楕円形状で、それぞれ面内および垂直磁気異方性を示した。特に垂直磁気異方性の大きさは縦楕円粒子の長軸の長さに比例して増加することを明らかにした。1)の成果から、直流-交流の両方のトンネル特性をハイブリッドした機能性材料への展開と2)の成果から、ナノ粒子の形状制御による新規磁気物性制御法の展開が期待できる。
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Journal of Applied Physics
巻: 128 ページ: 133904~133904
10.1063/5.0021636