研究実績の概要 |
令和元年度は,リン酸八カルシウム(OCP)表面に修飾したアミノ基含有分子が比較的安定的に存在した状態で,共有結合もしくは,静電的相互作用を介したコンドロイチン硫酸の修飾が可能なプロセスを見出した. 当該年度では,このプロセスを適用し,OCP表面のアミノ基修飾量が,1)その後のコンドロイチン硫酸の修飾量,2)生理的環境下での修飾したコンドロイチン硫酸の残存挙動に及ぼす影響を検討した.Raman分光法ならびに熱重量示差熱量計を用いた分析の結果,アミノ基存在量によって,OCP表面に修飾されるコンドロイチン硫酸量および,生理的環境を模した溶液中での溶出挙動が変化した.この際,共有結合により修飾したコンドロイチン硫酸と静電相互作用を介して修飾したものとでは,アミノ基修飾OCP表面での残存率が異なっていた. この結果を踏まえ,コンドロイチン硫酸/アミノ基修飾OCPへの成長因子モデルタンパク質の吸着挙動および,吸着タンパク質の生理的環境下における放出挙動を検討した.その結果,コンドロイチン硫酸/アミノ基修飾OCPは,未修飾のOCPと比較して,塩基性タンパク質を選択的に吸着することが示唆された.また,コンドロイチン硫酸とアミノ基間の結合状態のみならず,OCP表面に存在するアミノ基量がタンパク質の放出挙動に影響を及ぼすことが示唆された.これらの結果から, アミノ基修飾OCPとコンドロイチン硫酸との間の化学結合の強さによって,塩基性を示す成長因子の吸着と生理的環境下での放出挙動がコントロールされる可能性があることを見出した.実際の成長因子を担持した場合に,OCP表面におけるアミノ基を介したコンドロイチン硫酸の結合状態が骨芽細胞分化に及ぼす影響については,in vitroでの検討を計画している.
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