研究課題/領域番号 |
18H05945
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
景山 達斗 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 戦略的研究シーズ育成プロジェクト, 研究員(任期有) (40822177)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 毛髪再生 / 培養皮膚 / 毛包原基 / マイクロウェルアレイチップ |
研究実績の概要 |
我々の体表面を覆う皮膚は、表皮と真皮、毛包や皮脂腺などの皮膚附属器により構成され、表皮のバリア機能に加え、毛髪による紫外線からの保護や皮脂や汗による水分調節など様々な器官が関わって機能している。再生医療の分野では、表皮と真皮の2層構造を生体外で再現した培養皮膚と呼ばれる組織構築技術が開発され、薬物の透過性や刺激などを簡潔に予測できる画期的なツールとして製薬企業などで利用されてきた。しかし、従来の培養皮膚は皮膚附属器を含んでおらず、スクリーニングの予測精度や評価できる項目が少ないことが課題である。つまり、皮膚附属器を有する培養皮膚モデルが求められている。この実現には、皮膚附属器を生体外で大量に再生し、培養皮膚内でこの附属器が機能するように組み立てる技術の開発が不可欠である。そこで我々は、まず皮膚附属器の1つである毛包の原基を大量調製する技術を開発し、この原基を培養することで、生体外で毛包組織を再生する技術を開発した。すなわち、マウス皮膚から採取した上皮系細胞と間葉系細胞を1:1の割合で混合し、培養器内で凝集体を形成させたのち、7日間培養を行うことで、凝集体内の細胞が自発的に毛包を再構築した。この毛包組織をさらに培養したところ、毛幹の伸長が少なくとも培養14日まで観察され、形成した毛幹は生体と同様に特徴的なキューティクル構造を有していた。また、培地の成分を最適化することで、約8割の再生確立で毛包組織を再生することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
毛包原基を生体外で培養する際、当初は毛幹の形成確率は1/300程度と非常に低く、今後培養皮膚に組み込むためには、形成確率の改善が不可欠であった。そこで、発生プロセスや生体における毛包の周囲環境を模擬する工夫により、形成確率を275/300まで向上させる条件を見出した。また、上皮系細胞と間葉系細胞の播種タイムングを最適化することで、毛髪を再生する方向を制御することも可能となった。これは、再生毛包を培養皮膚に埋め込む際に必要と考えられる。また、予備検討ではあるが、培養皮膚に再生毛包を組み込む技術の開発など、令和1年度の計画を一部前倒しで進めていることから、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
毛包と皮膚構成細胞を混合し、インサート上で培養したのち、マウス皮膚欠損に移植すると、毛包を含む皮膚が自己組織化することを見出している。今後は、生体外の環境において、毛包を含む皮膚の構築を目指す。特に、導入する細胞の種類や比率、培地に添加する因子、酸素濃度勾配等を検討することで、再構築するための細胞周囲環境を整える。また、構築した毛包付培養皮膚の機能を評価するため、その組織構造は免疫組織化学的手法を用いて解析する。さらに、生体外モデルとしての機能を評価するため、①皮膚刺激性試験、②皮膚透過性試験、③薬剤機能性試験を進める。得られた試験結果は、既存の動物実験及び動物実験代替実験のデータと照合することで、作製したモデルが天然皮膚と同等の評価ができるか有用性を評価する。
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