本研究の最終目的は、末梢動脈疾患等により虚血状態にある生体体表面の定量的酸素分圧評価が可能なOMRI法を新規に構築することである。具体的には、マウス片肢を測定対象として想定し、測定対象の全域の酸素分圧分布可視化が可能なOMRI用共振器の開発を行うことに加え、開発した共振器により虚血肢モデルマウスを使用した酸素分圧測定を行い、定量的な酸素分圧評価が可能であることを実証することであった。 本年度は前年度に試作したアレイコイル共振器のin vivoへの適用における問題点を改良し、操作性、および測定の際に問題となる雑音の抑制を行った。具体的には、EPR励起用電磁波(大電力)に対応するための電子回路修正、チャンネル間の磁気的結合を抑制を容易にするためPINダイオードによるスイッチの導入、外部スイッチにより自動で電磁波入力をするチャンネルを切り替えることが可能な電子回路を作製した。前年度作製したアレイコイル共振器ではチャンネル切り替えのたびに磁石内での試料位置ずれが生じた他、磁気的結合の調整が逐一必要であったが、PINダイオードの導入により磁気的結合の調整が容易になり、in vivo測定への適応性があがった。均一試料を用いた画像化では、深さ10mm程度の画像化が可能であり、生体表面での測定が可能であることが示された。 研究期間全体を通じ、生体適用が可能、かつ従来よりも広範囲・高感度でのOMRI可視化を可能にした点において今後のOMRI計測の汎用性を高めたという点で重要である。今後は、生体体表面でのin vivo酸素分圧測定を行うことで、末梢動脈疾患の早期診断についての可能性を探る。
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