研究実績の概要 |
ホウ素医薬品は新たな低分子医薬品の骨格として注目を集めている。本研究では既にホウ素医薬品の主たる骨格として知られる環状オキサボリンとボロアミノ酸の2つを効率的に供給する手法の開発を目指した。 昨年度に環状エーテルから環状オキサボリンを構築する手法を見出した。本手法はルイス酸による開環と銅触媒によるホウ素化、脱保護の3段階からなる。本年度は基質適用範囲の調査とワンポット反応への応用を行った。5員環エーテルの側鎖にシリルエーテルやアミドのような官能基が存在しても良好に反応が進行し、官能基化された6員環オキサボリンが得られた。糖類などの天然物などへの応用も試みたが、基質の分解により、目的の生成物は得られなかった。開環、ホウ素化、脱保護のワンポット化には成功し、形式的に環状エーテルから一挙に環状オキサボリンを得ることが可能となった。また、合成した環状オキサボリン類は糖やカテコールに含まれる1,2-ジオール骨格と高い親和性を有することを見出し、論文として発表した。 アクリジン型有機光触媒と分子間水素引き抜きを利用したボロアミノ酸合成にも着手した。アクリジン型有機光触媒は容易に合成することができた。続いて安息香酸ボロン酸エステルとの錯体化を検討したが、NMR実験などから、4配位のボレート種になっていないことが示唆された。これはアクリジン型有機光触媒の低すぎる塩基性によるものだと考えられる。同様のコンセプトの報告がなされたのもあり、有機光触媒と反応設計を当初予定していたものから変更することとした。有機硫黄光触媒とカルボン酸誘導体を利用してカルボカチオンを発生させ、様々なヘテロ求核剤と反応することを研究中見出したため、a-アミノ酸とホウ素求核剤との反応に応用できないか検討を行った。しかしながら、現段階ではボロアミノ酸の合成には至っておらず、引き続き検討を行っていく。
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