研究課題/領域番号 |
18H05994
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
片山 裕美 八戸工業大学, 工学部, 助教 (30823661)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 有機ハイドライド法 / 自己組織化単分子膜 / 水素 |
研究実績の概要 |
近年、日本国内では水素社会実現に向けて、有機ハイドライド法を用いた芳香族化合物に水素を貯蔵する技術の開発が行われている。その中でも電気化学的手法は、電位を設定するだけで酸化還元反応を制御することが可能であるものの、水素貯蔵材料に含まれる不純物が電極の不活化を引き起こすことが課題である。そこで本研究では、あらかじめ水素貯蔵材料を修飾した電極を用いて電極表面での有機ハイドライド法による新規水素貯蔵システムの開発を目指す。本手法により、電極近傍で反応が進行するため、拡散律速にとらわれず反応が高効率に進行することが可能であり、新しい水素貯蔵・輸送システムの方法としての確立を目指す。水素貯蔵材料として用いる化合物は、広く検討に用いられているトルエンを基本骨格として芳香族化合物をターゲットとする。 これまで、電極表面上への水素貯蔵材料の修飾条件について検討した。金板電極を用いて、フェニルエタンチオールの自己組織化単分子膜(SAM)を形成した。この時、濃度(0.1 mMおよび0.5 mM)および浸漬日数(1~2日間)を変化させ、金電極上に修飾したフェニルエタンチオールの修飾分子数をサイクリックボルタンメトリー測定の還元脱離波を比較してSAMの修飾分子数の評価を行った。いずれのフェニルエタンチオ―ルの還元脱離波は、1120 mV付近にピークが見られた。また電流値については、0.1 mMの場合、浸漬1日間では143 μA、2日間では185 μAに対し、0.5 mMの場合、1日間では135 μA、2日間では200 μAであった。今後、単位面積当たりの修飾分子数を算出し、他の水素貯蔵材料との比較を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水素貯蔵材料を金電極上に修飾し、新たな水素貯蔵システムを開発するため、I. 電極表面上への水素貯蔵材料の修飾、II. 修飾電極の評価および酸化/還元挙動解析、III. 電気化学測定による修飾水素貯蔵材料の加水素/脱水素反応について検討する。 これまでの検討では、項目Iについて水素貯蔵材料の選定および修飾条件の検討について行った。電極への修飾は、自己組織化を利用して行い、トルエンを基本骨格とした材料の選定を行っている。自己組織化単分子膜は、溶液に電極を浸漬するだけで電極上に修飾するという簡便な方法であるが、濃度、温度、アルキル鎖長によって緻密さや修飾率に大きく影響するため、修飾条件のスクリーニングが必要である。そこで、フェニルエタンチオールを修飾分子に選定し、濃度(0.1 mMおよび0.5 mM)と浸漬日数(1日間~2日間)を変化させ、金電極上に修飾したフェニルエタンチオールの修飾分子数にどのような影響を与えるのか検討した。いずれのフェニルエタンチオ―ルの還元脱離波は、1120 mV付近にピークが見られた。また電流値については、0.1 mMの場合、浸漬1日間では143 μA、2日間では185 μAに対し、0.5 mMの場合、1日間では135 μA、2日間では200 μAであることが明らかとなった。今後、電極の単位面積当たりの修飾分子数を算出し、他の水素貯蔵材料についても同様の検討を行い比較をしていく。
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今後の研究の推進方策 |
水素貯蔵材料を金電極上に修飾し、新たな水素貯蔵システムを開発するため、I. 電極表面上への水素貯蔵材料の修飾、II. 修飾電極の評価および酸化/還元挙動解析、III. 電気化学測定による修飾水素貯蔵材料の加水素/脱水素反応について検討する。 項目Iでは、電極への修飾は、自己組織化によって行う。一般的に広く検討なされているチオール化合物を利用し、金作用電極と硫黄化合物を用いて検討する。溶液に電極を浸漬するだけで電極上に修飾する方法であるが、濃度、温度、アルキル鎖長によって緻密さや修飾率に大きく影響する。次項IIでの評価の結果をフィードバックし、最適条件を探索する。これまで、フェニルエタンチオールを用いて検討を進めており、今後、アルキル鎖を長くして同様の検討を行う予定である。 項目IIでは、項目Iで作製した水素貯蔵材料修飾の電極の評価(表面組成分析、修飾率)を行う。表面組成分析では、IR-RAS、分光エリプソメーター(膜厚測定)分析を行う。修飾率に関しては、自己組織化では貴金属-硫黄結合の還元脱離波をCV測定によって分析し、ピーク電気量から修飾分子数を算出する。 項目IIIでは、項目(I)で作製した水素貯蔵材料を修飾した電極を用いて加水素/脱水素反応を行う。まず系外から水素導入し、CV測定(ECstat-301, EC Frontier)を行う。得られたサイクリックボルタモグラムから還元電位を評価し、定電位測定を行い、化合物に水素を導入する。反応後、電極表面組成評価を行い、初期状態と比較する。脱水素反応では、電気化学測定に電池評価用ガス分析セルを用いて行う。
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