研究実績の概要 |
金属ハロゲン化物に有機物を加えた二次元ペロブスカイト構造を研究対象とし、MX2(pz)2(M = Fe, Co, Ni, Zn; X = Br, I, SCN; pz = ピラジン)を合成した。この構造は空孔サイトを持つ三次元ペロブスカイト構造であるFeF3を二次元状に展開したものとネットワークトポロジーが等しい。 これらの化合物の熱的ふるまいを調べたところ、構成要素であるピラジン分子が異なる温度で脱離する現象が見られた。MX2(pz)2は正方格子をもち、構造中のピラジンは化学的にすべて等価であるにも関わらず、上述の熱的に非等価なふるまいがM, Xの組み合わせによらず普遍的にみられた。このような非等価性は他の物質においても観測されることが文献調査によりわかったが、そのメカニズムについては未解明であったため、CoBr2(pz)2を題材として以下に示す解析を行った。 ・活性化エネルギーの推定 熱重量特性を昇温速度4, 8, 16 K min-1で測定した。CoBr2(pz)2からピラジンが二段階に脱離する反応の進行率をXで表す。昇温速度が違っても同一の反応率Xにおいては反応速度関数は等しいと仮定し、Xの時間微分を1/Tに対してプロットすることで反応の活性化エネルギーを推定した(Friedman法)。この方法によって一段階目、二段階目の反応の活性化エネルギーをそれぞれ159 kJ mol-1, 132 kJ mol-1と算出した。 M = Co, X = SCNの物質についてはX = Brの物質と類似の構造を持つにもかかわらず、熱的ふるまいが大きく異なる。なぜこのような違いが生じるのか、結合エネルギー等の因子を考慮することで今後検討を進めていく。
|