研究実績の概要 |
【①CBL5-CIPKによるHKT1・SLAH2・SLAH3の活性調節の有無】アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理測定の結果、CBL5-CIPKの全組み合わせ(11種)のうち、複数の組み合わせがHKT1・SLAH2・SLAH3の活性制御を行うことが明らかとなった。また、当初想定していた候補のイオンチャネル以外にも, K+チャネルKAT1・KAT2がCBL5-CIPKにより活性制御を受けることが判明した。 【②HKT1・SLAH2・SLAH3のリン酸化部位の同定】CBL5-CIPKにより活性制御されたイオンチャネルに対し, リン酸化部位の候補残基に疑似リン酸化・脱リン酸化変異を加えたチャネルで電気生理測定を行ったが, リン酸化部位の特定には至らなかった。 【③他のCBLとCBL5の機能重複性】①で活性調節が見られたCBL5-CIPKの組み合わせに対して, CBL5の代わりに他のCBLを用いても同様の現象が見られるかを確かめた。その結果, はCBL5の代わりにCBL1, 4, 9を用いても同様のイオンチャネル活性制御が起こることが判明した。このことから, CBL5はCBL1, 4, 9と少なくとも一部重複した機能を持つことが示唆された。 【④cbl5遺伝子欠損植物の表現型について】cbl5遺伝子欠損植物に対し塩耐性試験および低窒素条件での育成を試みたが, 野生型と異なる表現型は観測されなかった。③の結果より, CBL5はCBL1, 4, 9と重複した機能を持つ可能性が高いことから, cbl5遺伝子欠損植物においてはCBL5の働きを他の3つのCBLが相補していることが考えられる。そこで, cbl1, 4, 5, 9の四重遺伝子欠損植物を現在作製中である。また, slah2 slah3二重欠損植物については人工授粉が完了し, 現在ホモ遺伝子欠損体の選抜中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究年度1年目までの当初の研究計画はおおよそ達成することができた。CBL5-CIPKによる活性制御の対象としては当初, HKT1・SLAH2・SLAH3の3種を想定していたが, KAT1・KAT2も活性制御を受けることが新たに明らかになったため, CBL5の機能を解明する上でこれらも研究対象に加える必要が生じた。また, HKT1・SLAHのリン酸化部位についてはチャネルの候補残基に疑似リン酸化・脱リン酸化変異を加えることにより同定する予定であったが, 予想以上に多数のリン酸基が存在すると考えられ, この方法では同定が難しいことが明らかとなった。そこで, 【今後の研究の推進方策】に記す方法でリン酸化部位の検出を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
【①CBL5-CIPKにより活性制御を受けるイオンチャネルのリン酸化部位の同定】チャネルのリン酸化部位については, 当初予定していた, 候補残基に疑似リン酸化・脱リン酸化変異を加える方法では同定することができなかった。そこで, チャネルにペプチドタグを付加したものをCBL5-CIPKとともにアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ, チャネルタンパク質を免疫沈降で精製し, これをLC-MS/MS解析にかけリン酸化ペプチドを解析することによりチャネルのリン酸化部位の同定を試みる。 【②cbl四重遺伝子欠損株の表現型】cbl1, 4, 5, 9の遺伝子が欠損したcbl四重遺伝子欠損植物を現在作製中である。この四重遺伝子欠損植物とhkt1およびslah2 slah3欠損植物の表現型を比較することによりCBL5の機能を解明する。
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