研究実績の概要 |
【①CBL5-CIPKによるイオンチャネルのリン酸化部位の同定】前年度に引き続き、CBL5-CIPKにより活性制御されたイオンチャネルに対し, リン酸化部位の候補残基に疑似リン酸化・脱リン酸化変異を加えたチャネルで電気生理測定を行った。その結果CBL5-CIPKは,いずれのチャネルに関しても,既知のリン酸化部位とは異なる部位をターゲットとしていることがわかったが, リン酸化部位の特定までには至らなかった。そこで,手法をLC-MS/MSによるリン酸化部位検出に切り替え,まずはSLAC1に対するCBL5-CIPK11のリン酸化部位を検出した。その結果,既知のリン酸化サイト(Ser59, Ser120)とは異なるアミノ酸残基のリン酸化レベルが増加していたことから,その部位がCBL5-CIPK11による特異的なリン酸化部位であることが示唆された。他のチャネルに関しては,本年度中に解析を行うことは叶わなかったものの,今後同様の実験手法での解析を行っていく予定である。 【②cbl多重遺伝子欠損植物の表現型について】前年度の実験結果より, CBL5はCBL1, 4, 9と重複した機能を持つ可能性が高いことから, cbl1, 4, 5, 9の四重遺伝子欠損植物を作製し表現型の観察を行う予定であった。その過程で 得られたcbl1, 5, 9三重遺伝子欠損植物に関して,野生株と比較して気孔の応答に変化が見られた。この表現型はcbl1, 9二重欠損株やcbl5単一欠損株では見られなかったことから,CBL5がCBL1・CBL9とともに気孔開度の調節に寄与していることが示唆された。cbl四重欠損植物に関してはCRISPR-Cas9システムによる変異導入時にトラブルが生じ,本年度中に完成させることはできなかったが,今後あらためて作製し表現型の評価を行う予定である。
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