テトロドトキシン (TTX) は、強力な毒性、複雑な分子構造、海洋と陸上の様々な生物に分布する興味深い化合物である。陸上におけるTTXの起源(生産者)は不明瞭で、自然界でどのようにTTXが生産されるか(生合成経路)は長年の謎となっている。本研究では化学分析とメタゲノム解析によって陸上におけるTTXの起源および生合成経路の解明を目指して研究を実施した。TTXの生合成経路への知見を得るために、2018年度に引き続き新たなTTX関連化合物を探索した。質量分析器(MS)を用いて有毒イモリ抽出物を分析したところ、TTXの関連化合物と推測される新規成分が複数検出された。新規成分を各種クロマトグラフィーに供して精製し、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて化学構造を解析した。2019年度で複数の新規TTX類縁体、環状グアニジン化合物を得ており、いずれの成分もこれまで推測してきた陸上におけるTTXの生合成経路を支持する化学構造を有していた。これらの新規成分の発見により陸上におけるTTXの生合成経路、シャント経路についてより知見を深めることができた。本成果を国内外の関連学会にて発表し、現在論文投稿中である。 TTXの起源を探るために有毒イモリ生息地(複数地点)にて餌となりうる生物を採集、および環境微生物、イモリ表在菌の純化培養を行ったが、TTXを保有・生産する生物は発見されなかった。イモリの餌となる微小生物は毒を高濃度に保持しない可能性が考えられた。難培養性微生物が起源だと考え、有毒イモリ生息地にて土壌などの環境サンプルを採集した。断片化を抑えながらDNAを抽出し、環境DNAを基にFosmid Libraryを作成中であり、ポジティブクローンのスクリーニング方法を最適化した。一方、有毒イモリ生息地より単離した微生物のゲノムを次世代シーケンサーで解析した。
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