研究課題/領域番号 |
18H06000
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 治樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (80615451)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 窒素固定 / ニトロゲナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では分子状窒素をアンモニアへと還元する酵素ニトロゲナーゼを高等植物に導入し、窒素固定可能な作物植物を創り出す基盤を作ることを目指す。ニトロゲナーゼの還元コンポーネントであるNifHを指標に植物体内における最適なニトロゲナーゼの発現部位を探索する。プロトプラストを用いた各オルガネラでのNifH発現テストではそれぞれ葉緑体、ミトコンドリア、細胞質で発現するように適切なシグナルペプチドをNifHのN末端に付加し、その発現を確認した。C末端に融合したGFPのシグナルパターンから各オルガネラへの輸送は適切に行われており、想定通りNifHが各オルガネラで発現していることが確認された。各オルガネラでの発現が確認されたシグナルペプチドを用いてシロイヌナズナでのNifH発現株の作成も行った。恒常的に大量発現を誘導するプロモーターの制御下に各シグナルペプチドと融合したNifHを発現するDNAコンストラクトをアグロバクテリアを利用してシロイヌナズナのゲノムDNAに導入した。植物体内で発現するNifHは抗NifH抗体を用いたウェスタンブロット解析によって検出を行った。また花茎、葉、根といった部位に分取して植物体を採取し、各組織におけるNifHの発現量の比較検討も行った。その結果、花茎において有意にNifHの発現量が高いことが確認された。光合成が活発に行われる葉では発現量は低かった。また地表の組織については採取のタイミングを明期と暗期でそれぞれNifHの発現量を比較したが有意な差は見られなかった。ここまでの研究で各オルガネラでNifHを発現する形質転換植物ラインを作成し、その発現量の比較から適切なニトロゲナーゼ発現環境を評価する準備が整った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトプラストを用いた各オルガネラでのNifH発現テストではそれぞれ葉緑体、ミトコンドリア、細胞質で発現するように適切なシグナルペプチドをNifHのN末端に付加し、その発現を確認した。C末端に融合したGFPのシグナルパターンから各オルガネラへの輸送は適切に行われており、想定通りNifHが各オルガネラで発現していることが確認された。各オルガネラ内で発現するNifHの二量体形成はsplit YFPを用いたBiFCアッセイにより確認を行い、各オルガネラで発現するNIfHが二量体を形成していることが示唆された。各オルガネラでの発現が確認されたシグナルペプチドを用いてシロイヌナズナでのNifH発現株の作成も行った。恒常的に大量発現を誘導するプロモーターの制御下に各シグナルペプチドと融合したNifHを発現するDNAコンストラクトをアグロバクテリアを利用してシロイヌナズナのゲノムDNAに導入した。植物体内で発現するNifHは抗NifH抗体を用いたウェスタンブロット解析によって検出を行った。電気泳動の移動度から葉緑体とミトコンドリアへと輸送されたNifHはシグナルペプチドを含むN末端側で部分消化が確認され適切にオルガネラの輸送処理が行われていることが明らかになった。また花茎、葉、根といった部位に分取して植物体を採取し、各組織におけるNifHの発現量の比較検討も行った。その結果、花茎において有意にNifHの発現量が高いことが確認された。光合成が活発に行われる葉では発現量は低かった。また地表の組織については採取のタイミングを明期と暗期でそれぞれNifHの発現量を比較したが有意な差は見られなかった。ここまでの研究で各オルガネラでNifHを発現する形質転換植物ラインを作成し、その発現量の比較から適切なニトロゲナーゼ発現環境を評価する準備が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
各オルガネラでNifHを発現させる株を作成することに成功したので、各オルガネラ、各組織でのNifHの発現量を詳細に比較し、最も発現量が高い(=NifHが安定して存在する)環境を模索する。NifHが安定する部位で特異的に発現するプロモーターを用いて、該当部位でのみNifHを発現する株を創出し、そのNifH発現パターンを確認する。またシロイヌナズナで発現するNifHに活性があるかどうか確認するため in vitroの活性測定を行い各オルガネラ、各組織で発現するNifHの活性の評価を行う。
|