研究課題/領域番号 |
18H06006
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
中西 昭仁 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (60640977)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 微生物共培養 / 光合成 / 発酵 |
研究実績の概要 |
当該系は、二酸化炭素から直接的にエタノールを生産できる緑藻-酵母共培養系の構築を最終目標としている。当該系は独立栄養微生物と従属栄養微生物を組み合わせた生産系であるから、炭素源の固定を経て二酸化炭素から中間代謝物のグリセロールを生産する緑藻Chlamydomonas reinhardtiiの炭素源供給系と、供給されたグリセロールからエタノールを生産する出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの発酵系に大別できる。そこで、二つの研究系を各々に立ち上げて最終的に組み合わせること、すなわちC. reinhardtiiの炭素源供給系では培養系と物質生産に対する評価系の立ち上げとS. cerevisiaeの発酵系ではS. cerevisiaeによるグリセロール資化の実現を当該研究の方針とした。具体的には、C. reinhardtiiの炭素源供給系では培地や光強度など各種条件を調整し培養器を設定するなど光培養の基盤を構築したこととC. reinhardtiiの炭水化物含有率など物質生産性の評価系を構築したこと、S. cerevisiaeの発酵系ではS. cerevisiae群からグリセロール資化性酵母の単離に成功したこととグリセロール資化性酵母のエタノール生産性についての評価系を構築したこと、グリセロール資化性酵母によるグリセロールからエタノールを生産する発酵条件を検討しエタノール生産を実証したことを挙げる。特にS. cerevisiae由来グリセロール資化性酵母によるグリセロールからエタノールの生産は現在まで報告例がなかったため、研究内容をまとめ、Elsevier社出版の雑誌Heliyonへ論文をSubmitしたことを研究業績として挙げる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の助成が開始された2018年10月の段階では、私は自身の研究室で研究活動を開始して半年しか経っておらず、また研究室は分析機器や培養機器がセットアップされていない状態であったが、本研究種目の研究活動スタート支援の意図する通り、研究を開始するうえで基盤的な実験系を立ち上げ遺伝子を獲得してきた。今年度(2019年3月31日まで)は、C. reinhardtiiの培養や物質生産性の評価に関する実験系のセットアップ、GPP遺伝子の獲得を研究目標に掲げ、これらを達成した。更に、S. cerevisiae由来のグリセロール資化性酵母の選抜、およびグリセロール資化性株によるグリセロールからのエタノール発酵条件の構築を達成し、次年度(2019年4月1以降)実施予定であったGC/FIDを用いたエタノール生産性の評価までを終えている。ここで示したエタノール生産性評価は当初、本学既存のGC/FIDを修理して用い評価する予定であったが、基盤が故障し修理不可であることが判明したため研究計画を前倒した。またS. cerevisiae由来のグリセロール資化性株を用いたグリセロールからのエタノール発酵に関しては、現在までに報告例がなく新規性があったため、グリセロール資化性株の選抜、酸化還元剤を加えた各種培養条件の検討、グリセロールからのエタノール生産評価までを含めて論文をまとめ、既にElsevier社出版の雑誌Heliyonに論文をSubmitしている。従って、上記の通り今年度の目標として掲げていた研究目標以上を達成し、論文投稿にまで至っている点を理由とし、当該研究は当初の計画以上に進展していると自己点検し評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の最終目標は、二酸化炭素から直接的にエタノールを生産できる現時点で唯一の緑藻-酵母共培養系を構築することである。当該系は前述の通り、C. reinhardtiiの炭素源供給系とS. cerevisiaeのエタノール発酵系に大別できる。エタノール発酵系では既に系の構築を完了しているが、一方で炭素源供給系では既にC. reinhardtiiの光培養系は構築されているもののC. reinhardtii新規株の創生には着手できていないので、GPP遺伝子を高発現系のベクターに導入した上でこれの形質転換をし、GPPを過剰発現するグリセロール生産株の創生を行う。本系の実証で問題となる点は、C. reinhardtiiのグリセロール供給とグリセロールからのエタノール生産であると考えているが、グリセロールからのエタノール生産を既に実証できているので、次年度の課題はC. reinhardtiiのグリセロール供給であると考えている。ただ、現在までにグリセロールを培地中に分泌させる培養条件を検討しているのでこれを実証し、二酸化炭素から直接的にグリセロールを培地中に炭素源供給する系を完成させる。その上でこれら二種の微生物を共培養に供し、二酸化炭素からの直接的なエタノールの生産を実証、またエタノール生産性が最高となるように培養条件を最適化する。以上で当該目標の二酸化炭素から直接的なエタノール生産共培養系の構築を達成できると考えていて、これに加えて研究業績を論文化し報告する所存である。
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