DNAフリーゲノム編集技術を用いたカンキツの新品種開発技術基盤を確立することが本研究の目的である.遺伝子組換え技術を用いないので,作出された新品種は比較的容易に市場に流通させることが可能である.よって,本研究の成果は社会実装に繋がる研究であると考えている. これまでに,ホルモン濃度の調整・培養条件を検討することで,カラタチの胚軸からカルス誘導,さらに,カルスからの個体再生,この一連の組織培養を高効率でおこなえるようになった.これにより,DNAフリーゲノム編集を施したカルスから個体作出までの道程が確立できた. これと並行して,パーティクルボンバードメント法を用いて,カラタチのカルスにRNP(Ribonucleoprotein: SpCas9タンパク質とguide RNAの複合体)を導入するための条件検討をおこなってきた.まずは,GUS遺伝子を搭載したplasmid DNAを用いて,形質導入をおこなった.結果,複数のGUS染色スポットを確認できた.そこで同条件で,RNPの導入をおこない,数日後にカルスからgenome DNAを抽出し,CAPS解析をおこなった.しかし,ゲノム編集による変異は確認できなかった.そこで,パーティクルボンバードメントの条件(例:He圧力,減圧力,パーティクルの射出時間,射出口からサンプルまでの距離,カルスの配置等)を検討した.しかし,変異は確認できなかった.ゲノム編集できない原因は,細胞壁の堅さにあると考え,細胞壁分解酵素溶液を短時間処理した後,パーティクルボンバードメントによるRNPの導入も試みたが,未だ変異は確認できていない.現在,パーティクルボンバードメントに用いるパーティクルについても検討しているところである.
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