研究課題/領域番号 |
18H06020
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
渋井 宏美 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林産試験場, 研究職員 (50825932)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | カラマツ / 油溶性薬剤 / 浸透メカニズム / 樹脂道 / 木材保存学 / 組織学 |
研究実績の概要 |
北海道の主要な人工林材であるカラマツは,心材部における液体の浸透性が極めて悪いため,保存処理木材の規格を満たすような防腐・防蟻薬剤の浸潤度が得られない場合が多かった。近年は,カラマツ心材でもインサイジング処理と吹付処理の併用によって十分な浸潤が得られる油溶性薬剤が実用化されているが,なぜ浸透性が高いのかは明らかでない。本研究では,油溶性薬剤の浸透メカニズムを解明することを目的として,薬剤浸透挙動の可視化を試みている。 今年度は,北海道産カラマツ心材を用いて木材組織内における油溶性薬剤の浸透経路を調べた。木口面から着色した油溶性薬剤,または比較のために着色した水を浸透させたカラマツ心材木片を実体顕微鏡や光学顕微鏡を用いて観察した。水はほとんど浸透しなかったが,油溶性薬剤はよく浸透し,仮道管,放射柔細胞,放射仮道管,軸方向樹脂道,水平樹脂道といったすべての組織を浸透経路としていることが明らかとなった。なかでも特に樹脂道の内側を通った痕跡が多く観察されたことと,樹脂道が木片の浸透面から貫通している部位では,浸透させた油溶性薬剤が反対側にすばやく染み出る様子が観察されたことから,油溶性薬剤は樹脂道を優先的に通ることが明らかとなった。マイクロフォーカスX線CT装置を用いて観察した浸透前後のカラマツ心材木片では,浸透前は空洞であった樹脂道が浸透後に埋まる様子が観察されたことから,非破壊的に油溶性薬剤が樹脂道を通る様子を観察することが可能となった。カラマツ樹脂は油溶性薬剤に容易に溶けたことから,樹脂との親和性が高いためにすばやく樹脂道内を通ったことが示唆された。カラマツ材における樹脂道ネットワークが,油溶性薬剤の高い浸透性に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難浸透性木材であるカラマツにおける油溶性薬剤の浸透挙動に関するデータが得られ,これをもとに初年度で学会発表を行うことができたため,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,液体浸透性の異なる他樹種の材を用いて浸透挙動の違いを比較することで,樹種ごとに異なる組織学的特徴と浸透性に関する知見を増やすとともに,SEM-EDXを用いて薬剤有効成分の組織内分布の観察を進める。
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