研究課題/領域番号 |
19K21163
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮坂 加理 日本大学, 生物資源科学部, 助手 (00780173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 溶質拡散係数 / 低水分 / 電気伝導度 / 凍土 / 土壌中の溶質拡散 / 乾燥土壌 / 土壌の電気伝導度 / 凍結土壌 |
研究実績の概要 |
申請者は低水分時に溶質拡散が抑制されるのは土壌水の連続性が失われ、水膜の薄い部分が拡散を抑制するためだと考えた。本研究では、土壌の乾燥過程は凍結過程と似ている点から、低水分時に水膜の薄い部分が拡散を抑制したためにDが著しく低下したならば、飽和土壌を凍結させていったときの液状水の量とDの関係においても同様の結果が得られると仮定した。以上から、本研究では、仮説「低水分時の土壌水中の溶質拡散は土粒子に着した水膜の薄い部分(ネック)によって著しく低下する」を検証することを目的としている。 2019年度では、実験で用いる土壌試料の準備を完了した。実験試料として、国内の畑地土壌、庄内砂丘砂、モンゴルの草原土壌2種類、および砂丘砂1種類、標準砂、そして、ジルコニアビーズを用いる予定である。すでに入手済みの庄内砂丘砂を用いて、土壌電気伝導度による溶質拡散係数の推定実験を行った。その結果、低水分時での土壌の電気伝導度を測定するためには、交流電圧1kHz、±5Vをかけることで測定することが可能であることが示された。庄内砂丘砂においては、あらかじめ水で洗い流すことで土壌中の塩分を極力減少させ、想定濃度で実験を行うことができた。その結果、溶質拡散係数を実際に測定した結果とほぼ同等の結果を得られることができた。現在、国内の畑地土壌で同様の実験を行う準備段階であるが、塩分を完全に洗い流すことができないことから、低水分時での電気伝導度の測定値には土壌中のイオン濃度を厳密に測定する必要がある。そこで、畑地土壌に異なる濃度の溶液を様々な含水比になるよう所定量加え、土壌の電気伝導度を測定することで、低水分時に土壌溶液濃度の推定する実験を準備しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
土壌試料で用いる予定であるモンゴルの3種類の土壌試料は今年度前半に入手予定であった。しかし、モンゴルでの土壌試料の輸出手続き、および日本での輸入手続き等が想定以上に時間がかかり、今年度末に入手することができた。現在、モンゴル土壌の実験利用のための準備を行っているため、補助事業期間の延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の流れとしては、 1.土壌試料の収集および土壌の物理特性の測定を行う。2.NaCl水溶液水分量をを異なる濃度で3種類用意し、各試料を小分けし、それぞれに10通りの水分量に相当するように溶液を投入しよくかき混ぜ均一にし、均一の密度で容器に詰める。3.25℃のチャンバー内に設置し、各土壌電気伝導度の測定を行う。土壌試料3種類、溶液濃度3種類、そして水分量は各10種類の計90試料を扱う。4.土壌の電気伝導度の結果から溶質拡散係数を算出する。5.別途、同様の溶液濃度で飽和に調整した各土壌試料を、NMRを用いて-30度から20度の範囲で測定を行い、温度と不凍水分量の関係を求める。6.(5)と同様の飽和土壌試料を用いて、チャンバー内の温度を-30度から20度の範囲で土所の電気伝導度の測定を行う。7.(5)で出た温度と不凍水分量の関係と(6)で出た温度と溶質拡散係数の関係から、不凍水分量と溶質拡散係数の関係を算出する。8.(4)で求めた水分量と溶質拡散係数との関係と、(7)で求めた不凍水分量と溶質拡散係数との関係を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で用いるモンゴルの土壌試料の輸入輸出手続きが想定外に時間がかかり、年度末に入手できた。これら土壌試料のNMR測定に費用がかかるため、次年度に使用する予定である。また、各土壌試料の土壌特性の測定には研究協力者にお願いする予定であり、その謝金としても用いる予定である。
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