乾燥地の塩類集積地で塩濃度分布を決める重要な値である土壌水中の溶質拡散係数は、多くの実験から高水分時には体積含水率の1~2乗に比例することが分かっている。これは体積含水率の低下に伴い拡散経路長が長くなることから理論的に説明される。一方で、低水分時の溶質拡散係数(Ddif)の測定例は限られるものの、特定の水分以下ではDdifが体積含水率の4乗に比例し、著しく溶質拡散が抑制されるとの報告がある。この要因として、固相表面電荷によるイオン排除の影響が示唆されていたが、申請者の行った実験により否定された。この結果より、ある土壌に対する相対拡散係数(土壌水中の溶質拡散係数を水中の溶質拡散係数で除したもの)は、溶質に寄らず一定であることがわかった。 低水分においてDdifが低下するメカニズムを明らかにするためには、低水分におけるDdifの測定が必須であるものの、通常行われてきたDdifの測定方法は、時間が非常にかかりかつ実験誤差ができやすいものであった。 そこで、4極センサーを用いて土壌の電気伝導度と体積含水率の関係を測定することで、高水分から低水分までの領域で土壌の電気伝導度測定からもDdifの測定が可能であることを砂丘砂を用いて実験により確認を行った。 以上から、低水分において土壌の電気伝導によってもDdifが推定できることを明らかにしたことから、低水分におけるDdifが容易に推定できることを示した。 今後、この方法を用いて、凍結土壌によるDdifと低水分におけるDdifの測定を行っていくことで、凍結土壌における溶質拡散と低水分における溶質拡散のメカニズムを比較することができると考えられる。
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