研究課題/領域番号 |
18H06027
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
大橋 博之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (10826184)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 酵素機能改変 / 植物細胞壁 / 多糖分解酵素 / アラビノフラノシダーゼ / バイオマス分解 |
研究実績の概要 |
非可食バイオマスの効率的な分解には、バイオマス内部への浸潤性のが低いセルラーゼのセルロースへのアクセス向上が重要である。そのため、化学的/物理的な処理や、補助酵素によるマトリックス多糖類の分解試みられている。マトリックス多糖類は、多種類の糖が複雑に結合しており、その分解には多数の補助酵素を作用させる必要がある。なぜなら、補助酵素の多くは特異性が高く、多数の糖を単一の酵素で分解することが困難なためである。本研究では、構造未知のダイコン由来アラビノフラノシダーゼ(RsAraf1)をモデルとし、多種類の糖が分解可能で熱安定性の高い酵素を、タンパク質データベースと分子モデリングを活用して改変を行うことで、バイオマス糖化酵素の改変に対する新規アプローチの開拓を目的とする研究を行う。 H31年度はまず、構造未知のRsAraf1の予測構造の構築と酵素活性部位の予測を行い、熱安定性や基質特異性の変化をシミュレートすることにより、変異導入部位の決定を行った。また、未改変RsAraf1をピキア属酵母を用いて異種発現し、改変酵素の評価に必要となる、酵素学的な特性を決定した。さらに、各種変異酵素発現株を作製し、変異酵素の評価を進めている。その結果、2部位へのジスルフィド結合を導入することにより、40 - 45 °Cにおける熱安定性が約30%向上した変異RsAraf1が取得できた。今後は、基質認識の向上も期待される改変酵素について、その酵素学的特性の評価、マトリックス多糖類分解活性の評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・ダイコン由来アラビノフラノシダーゼの予測構造モデルを構築し、基質認識および熱安定性の改変が期待される変異導入部位を決定した。タンパク質データベース(PDB)に登録されている、構造既知のタンパク質をリファレンスとし、アラビノフラノシダーゼの予測構造を構築した。酵素活性部位は、スルフィド結合(-S-)で結合した2糖もしくは3糖構造を分子モデリングした擬似基質を用いて予測した。現在、決定した候補変異導入部位を組み合わせ、機能付与された改変酵素の入手を試みている。
・未改変および改変アラビノフラノシダーゼは、ピキア属酵母発現系を用いて発現させ、入手した。まず、未改変酵素について、粗精製を行った後、至適pH、至適温度、熱安定性、基質選択性について測定を行った。改変酵素については、遺伝子工学的に変異を導入した。当初、基質特異性の変化が期待される変異酵素の諸性質について、H31年度中に解析を進める予定だったが、基質の入手が困難であったため、現在も解析中である。入手した改変RsAraf1のうち、熱安定性の改善が期待される変異酵素については、その性質を解析し、40 - 45 °Cにおける残存活性が改善された酵素が取得できた。また、これらの株の基質特異性は未改変酵素と同様であり、アラビノフラノースとキシロピラノースを遊離した。
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今後の研究の推進方策 |
H31年度に完了できなかった、基質特異性の改変が期待される変異酵素の評価を進める。これまでに明らかになった、熱安定性改善が期待される変異を、基質特異性改変酵素にも導入し、熱安定性と基質特異性の変化を評価する。バイオマス分解活性の評価には、マトリクス多糖類の部分構造を1フェニル3メチル5-ピラゾロン(PMP)により標識したオリゴ糖を基質として用いる。これらPMP-オリゴ糖の標識、分離について検討を行い、マトリクス多糖類部分構造の解析系を構築した後、未改変及び改変RsAraf1のバイオマスに対する分解活性を測定する。
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