研究課題/領域番号 |
18H06033
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中村 有孝 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 特任助教 (60824456)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | M細胞 / アレルギー / 気管支 / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
アレルギー性気管支炎や花粉症などの気道アレルギー疾患は、抗原(アレルゲン)に暴露された気道粘膜が異常な免疫応答を起こすことによって引き起こされることが広く知られているが、このような異常な免疫応答がどのように誘導されるのかは明らかでない。M細胞は、粘膜の免疫誘導組織であるパイエル板や鼻咽頭関連リンパ組織の上皮層に存在し、外界から抗原を取り込む機能を有する上皮細胞である。このため、粘膜におけるアレルギー応答にM細胞による抗原取り込みが何らかの形で貢献していることが疑われる。しかし、M細胞が気道アレルギー疾患における個体レベルでの免疫応答にどのように関与するのかは不明であった。 M細胞を欠損するマウスでは、粘膜における抗原取り込みが減少することが報告されていることから、アレルギー症状が緩和すると予想した。しかし、このマウスにダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)由来抗原を経鼻的に投与すると、肺胞洗浄液中に含まれる炎症性細胞の数が野生型マウスに比べて増加する傾向にあった。また、肺組織中における炎症性細胞の浸潤も増加していた。このことから、M細胞欠損マウスにおいては、下部気道におけるアレルギー症状が予想に反して悪化する可能性が示唆された。 現在は、アレルギー応答を抑制する抗炎症応答がM細胞の欠損により低下している可能性を考慮し、実験条件の再検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予想と異なる結果が得られたため、当初の実験計画を見直し、抗炎症応答が低下している可能性に着目した。しかし、正確なデータを得るために実験条件(抗原の投与量、期間)の再検討を行う必要があり、計画にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、M細胞欠損による抑制性免疫応答(制御性T細胞など)の変化に着目して解析を行う。また、粘膜における免疫応答は上皮細胞の接合(タイトジャンクション)、入れ替わり(ターンオーバー)、粘液の産生を増加させ、バリア機能を維持する役割が知られている。ダニ抗原はそれ自体が自然免疫系を活性させることから、気道粘膜におけるバリア機能がM細胞の欠損によって低下していた場合、多くの抗原が体内に侵入し、過剰な自然免疫応答を引き起こす可能性が考えられる。そこで、気管支における上皮バリア機能についても、免疫染色などを実施して評価を行うことを予定している
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