研究課題/領域番号 |
18H06037
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
中村 翔 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (50829223)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 性腺刺激ホルモン放出ホルモン / 発情行動 / キスペプチン / c-Fos |
研究実績の概要 |
本研究は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH) ニューロン群がどのような支配のもとに発情行動を制御するのか明らかにし、発情行動に問題を有する家畜の原因解明や治療法開発に資する基礎的知見を提供することを目的としている。 視床下部に局在するGnRHニューロンは、雌では発情期に下垂体からのホルモン分泌を促し排卵を誘起すると同時に、雄を受入れる発情行動の発現にも関与すると考えられている。しかし、GnRHという同一のペプチドが内分泌と発情行動という異なる生理現象を協調的に調節する機構については不明である。本研究は、性腺刺激ホルモン分泌を調節するGnRHニューロン群と発情行動の発現に関与するGnRHニューロン群が、それぞれ別の制御系によりコントロールされているとの仮説を立て、GnRHニューロンを起点としたホルモン分泌調節機構と発情行動調節機構が協調的に機能するメカニズムを探る。 本研究では、性腺刺激ホルモン分泌を調節するGnRHニューロンと発情行動に関与するGnRHニューロンをcatFISH法を用いた染色により、それらの局在を明らかにする計画である。catFISH法に用いる活性化マーカーとしてc-Fos mRNAおよび転写直後のc-Fos mRNA前駆体を染め分ける必要がある。今年度は、c-Fos mRNAおよびc-Fos mRNA前駆体のcRNAプローブの作成およびin situ hybridizationによる検出法を確立した。また、GnRH分泌を強力に促すキスペプチンの抹消投与後に脳を採取し、GnRHおよびc-Fos mRNAの染色を行ったところGnRHニューロンの活性化をc-Fos mRNAによって検出することもできた。今後はキスペプチン欠損(Kiss1 KO)ラットを本学施設に導入し、発情行動時に活性化するGnRHニューロンの局在を明らかにしていく計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、性腺刺激ホルモン分泌に関与するGnRHニューロンと発情行動の発現に関与するGnRHニューロンが同一のニューロン群によるものか否か明らかにする必要がある。行動発現時とホルモン分泌時に活性化したGnRHニューロンをcatFISH法により染め分ける計画である。今年度は研究室が設置された初年度であったため、各種実験系の確立に時間を要したが、本研究の肝となるc-Fos mRNAおよび転写直後のc-Fos mRNA前駆体のin situ hybridizationによる染色法を確立することができた。また、キスペプチンの抹消投与によってc-Fos mRNAがGnRHニューロン上に発現することも確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、キスペプチンをコードするKiss1遺伝子を欠損したKiss1 KOラットを本学施設にて飼育予定である。Kiss1 KOラットの性腺刺激ホルモン分泌は強力に抑制されている。そのため、性腺刺激ホルモン分泌に関与するGnRHニュ ーロンの活動も抑制されている。次年度は、Kiss1 KOラットの雌が発情行動としてロードシスを発現するときに神経活動が活発になったGnRHニューロンを、発情行動に関与するGnRHニューロンとして同定する計画である。また、キスペプチンを外因的にKiss1 KOラットへ投与し、性腺刺激ホルモン分泌に関与するGnRHニ ューロン群の局在をc-Fos染色により明らかにする計画である。最終的には同一個体において、発情行動に関与したGnRHニューロンと性腺刺激ホルモン分泌に関与したGnRHニューロンを明らかにすることを目指す。
|