平成30年度は、犬の消化管リンパ腫の腫瘍細胞の分子生物学的特徴や発がんメカニズムの解明にかかわる基礎研究を実施した。犬の慢性炎症性腸疾患と食事療法の反応性、消化管型リンパ腫と抗がん剤の治療反応性に関する研究については第15回日本獣医内科学アカデミー学術大会で発表した。その内容を学術誌に投稿するため取りまとめている最中である。 犬の消化管型リンパ腫と犬白血球型に関する研究において症例は7割程度まで集まっており、同時に白血球型のタイピングを遂行中である。 当初計画にあったマーカーの検索および分子標的薬の研究においては当該症例のパラフィン標本を用いてPDL1の染色を試みているが、現在までのところ有意なデータは得られていない。 今後は犬白血球型を含めたリスク因子の解析とともに、高リスク犬種における遺伝的関連因子や腫瘍性T細胞に発現するマーカー分子を総合的に解析することで慢性炎症性腸疾患から高グレードT細胞性リンパ腫に至るまでの病態が解明できると考えられる。
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