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2019 年度 実施状況報告書

核ラミナが核膜孔の分布を制御する分子メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K21178
配分区分基金
研究機関東京工業大学

研究代表者

志見 剛  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (60817568)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード核ラミナ / ラミン / 核膜孔 / ヌクレオポリン
研究実績の概要

動物細胞では、巨大なゲノムDNAの構造と機能を制御するために、ゲノムDNAが折り畳まれて高次クロマチン構造を取り、核膜によって包み込まれることが必要不可欠である。核膜の内側を裏打ちする核ラミナは、核の大きさ、形、硬さを調節し、凝集したヘテロクロマチンと結合する。核膜を貫通する核膜孔複合体は、核-細胞質間における高分子の輸送を調節し、緩んだユークロマチンと結合する。このように、ラミナと核膜孔の構造を保つことは、ゲノムDNAの構造と転写、複製、修復などの機能を局所的に制御するために必要である。
ラミナの主要な構造タンパク質であるラミンは、タイプV中間径フィラメントタンパク質の一種であり、A型ラミン(LA, LC)とB型ラミン(LB1, LB2)によって構成される。近年、申請者らは、3次元構造化照明顕微鏡法(3D-SIM)とクライオ電子顕微鏡トモグラフィー法(cryo-ET)によって、マウス胎児線維芽細胞
(MEF)におけるラミナと核膜孔複合体の微細構造を調べた。その結果、ラミン分子は、4量体を形成し、繋がって直径約3.5ナノメートルのラミンフィラメントを形成すること、ラミンフィラメントが重なり合って厚み約14ナノメートルのラミナを形成すること、これらのラミンフィラメントが不均一に分布することによってラミナが網目構造を取ることを明らかにした。一方、核膜孔複合体は直径約120ナノメートルの筒状構造をとり、約30種類のヌクレオポリンから構成される。核膜孔複合体がラミナの網目構造の穴に1つずつ挿入されている。
本研究では、申請者らは、ヌクレオポリンの一つであるElysを介してラミンフィラメントが核膜孔複合体と結合し、ラミナと核膜孔複合体が相互の構造と分布を制御することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

申請者らの3D-SIMの実験結果によれば、MEFにおいてLA/CまたはLB1が欠損すると、ラミナの網目構造が拡大し、ラミンファイバーに沿って分布する核膜孔複合体が、顕著に減少した。この実験結果から、LA/CとLB1は、ラミナの網目構造の大きさと核膜複合体の分布・数を制御すると考えられる。また、申請者らのcryo-ETの実験結果によれば、ラミンフィラメントが核膜複合体の核質側アウターリング付近に接触していた。核膜孔複合体の核質側で、アウターリングを構成するヌクレオポリンであるElysはLAと、バスケットを構成するTprはLCと結合することが知られている。申請者らの3D-SIMの実験結果によれば、Elysをノックダウンすると、拡大したラミンファイバーの隙間で核膜孔複合体が凝集した。一方、Tprをノックダウンすると、ラミナの網目構造が小さくなり、核膜孔複合体の数が増加した。以上の結果から、LA/CとLB1を含むラミンフィラメントは、Elysを介して核膜孔複合体と接触して機能することが強く示唆される。
現在、この研究成果をラミナと核膜孔複合体の構造的な繋がりに関する論文として投稿中である。

今後の研究の推進方策

現在投稿中であるラミナと核膜孔複合体の構造的な繋がりに関する論文のリバイスに対して、以下の実験が要求されると考えられる。Elysをノックダウンすることによって、核膜孔複合体のアッセンブリーが阻害されることが知られている。そこで、ElysをノックダウンしたMEFの核膜孔複合体の構造をcryo-ETによって調べる。また、Elysをノックダウンすることは、細胞増殖の停止や細胞死を引き起こすことが分かっている。よって、Elysをノックダウンしてからこれらの影響が出る前(2、3日以内)にラミナと核膜孔複合体の分布を3D-SIMによって調べる。申請者らのこれまでの実験結果から、LA/CとLB1を含むラミンフィラメントは、Elysを介して核膜孔複合体と結合すると考えられる。そこで、申請者らは、Elysと結合するLA/CとLB1の領域を同定する予定である。FLAGタグ付きの各ラミンの全長、二量体形成に必要な中央のセントラル領域、ポリマー重合に必要なN末端のヘッド領域とC末端のテール領域をそれぞれ強制発現したMEFを使ってFLAG抗体ビーズによる免疫沈降法を行い、Elysと結合する領域をElysの特異的抗体によって検出する。GSTタグ付きの同定した領域をリコンビナント精製してプルダウンアッセイを行い、MEFの溶解液からElysと結合する領域と結合するタンパク質をプロテオーム解析によって網羅的に決定する。

次年度使用額が生じた理由

本研究の課題で得られた実験結果に基づいて投稿した論文のリバイスで、いくつかの追加実験が想定される。また、本研究の研究計画調書に記載した実験の一部が行われていない。これらの理由から、次年度使用額が生じる結果となった。
次年度に繰越した予算の使用計画は、以下の通りである。申請者らは、ElysをノックダウンしたMEFのラミナの構造と核膜孔複合体の分布を3D-SIMとcryo-ETによって調べることを計画している。よって、細胞培養実験、免疫染色実験関、ノックダウン実験に関連する試薬等と、3D-SIMとcryo-ETの使用料を計上する。また、申請者らは、Elysと結合するLA/CとLB1の領域を同定する実験を行う予定である。FLAGタグ付きの各ラミンのフラグメントをそれぞれ強制発現したMEFを使ってFLAG抗体ビーズによる免疫沈降法を行い、Elysと結合する領域をElysの特異的抗体によって検出する。GSTタグ付きの同定した領域をリコンビナント精製してプルダウンアッセイを行い、MEFの溶解液からElysと結合する領域と結合するタンパク質をプロテオーム解析によって網羅的に決定する。よって、遺伝子組換え実験と生化学実験に関連する試薬等を計上する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Dept. of Cell and Developmental Biology/Feinberg School of Medicine/Northwestern University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Dept. of Cell and Developmental Biology/Feinberg School of Medicine/Northwestern University
  • [国際共同研究] Dept. of Biophysics/UT Southwestern Medical Center(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Dept. of Biophysics/UT Southwestern Medical Center
  • [国際共同研究] Dept. of Embryology/Carnegie Institution for Science(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Dept. of Embryology/Carnegie Institution for Science
  • [国際共同研究] Dept. of Biochemistry/University of Zurich(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      Dept. of Biochemistry/University of Zurich
  • [雑誌論文] Nuclear Lamins A/C and B1 Provide a Structural Framework That Organizes and Anchors Nuclear Pore Complexes2020

    • 著者名/発表者名
      Kittisopikul Mark、Shimi Takeshi、Tatli Meltem、Tran Joseph R.、Zheng Yixian、Medalia Ohad、Jaqaman Khuloud、Adam Stephen A.、Goldman Robert D.
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      https://doi.org/10.1101/2020.04.03.022798

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A mosaic of old and young nucleoporins2019

    • 著者名/発表者名
      Shimi Takeshi、Kimura Hiroshi
    • 雑誌名

      Journal of Cell Biology

      巻: 218 ページ: 385~386

    • DOI

      10.1083/jcb.201811170

  • [雑誌論文] Adaptive-Resolution Multi-Orientation Analysis of Complex Filamentous Network Images2019

    • 著者名/発表者名
      Kittisopikul Mark、Vahabikashi Amir、Shimi Takeshi、Goldman Robert D.、Jaqaman Khuloud
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      https://doi.org/10.1101/757005

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] クライオ電子顕微鏡トモグラフィーと超解像度顕微鏡による核ラミンー核膜孔間の相互作用の解明2019

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Shimi, Mark Kittisopikul, Stephen A. Adam, Yixian Zheng, Khuloud Jaqaman, Robert D. Goldman
    • 学会等名
      第42回分子生物学会・年会
    • 招待講演
  • [学会発表] Elys anchors the Nuclear Pore Complex to Nuclear Lamins2019

    • 著者名/発表者名
      M. Kittisopikul, T. Shimi, M. Tatli, S.A. Adam, Y. Zheng, O. Medalia, K. Jaqaman, R.D. Goldman
    • 学会等名
      ASCB/EMBO 2019 Meeting
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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