研究課題/領域番号 |
18H06047
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 亮次 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定研究員 (30827564)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 部位特異的in vivo光架橋法 / 翻訳停止配列 / 翻訳途上ポリペプチド鎖 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞内で翻訳が安定に停止する「翻訳停止配列」を利用し、それを部位特異的in vivo光架橋法と組み合わせることで、生細胞内で翻訳の各ステップでの翻訳途上ポリペプチド鎖のダイナミックなフォールディング・相互作用動態を解析可能な生化学的手法の構築を目指すものである。 これを達成するために、細胞内でより安定に翻訳途上ポリペプチド鎖を蓄積可能で翻訳途上鎖を検出可能な「翻訳停止カセット配列」の構築を行った。以前の研究から最も翻訳停止効率が良いと報告されているMannheimia succiniciproducens由来のSecM翻訳停止配列を鋳型に、その上流にHAタグ下流にSPAタグ配列を付加することで、翻訳途上鎖を安定に蓄積すると共に翻訳停止効率を評価できるカセット配列を構築した。 また、確かに翻訳停止配列を付加した翻訳途上鎖の相互作用動態を部位特異的in vivo光架橋法を用いて解析可能かを検証するために、翻訳停止配列を有する、細胞のタンパク質膜透過能モニターポリペプチド鎖であるVemPを対象に系統的なin vivo光架橋解析を行った。その結果、リボソームタンパク質やSecY等のVemPと相互作用すると予測された因子との架橋を検出した。さらに、パルスチェイス法とin vivo光架橋法を組み合わせたPiXie法によって、それらの因子とVemPの相互作用のタイミングを検討し、翻訳停止配列をもつ翻訳途上鎖の相互作用動態をin vivo光架橋解析を用いて解析できることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案する、「翻訳停止配列」を利用し、部位特異的in vivo光架橋法と組み合わせることで、生細胞内で翻訳途上ポリペプチド鎖の動態を解析可能な生化学的手法の構築において、翻訳停止状態の翻訳途上鎖の動態をin vivo光架橋法で解析できるかは極めて重要な問題であった。 そこで、翻訳停止配列を有するVemPポリペプチド鎖を対象に、系統的なin vivo光架橋解析を行った。その結果、相互作用が予測されるリボソームタンパク質やSecY等の因子との相互作用動態を明らかにすることができた。また、VemPと相互作用し、その機能制御に関わる新たな因子の同定にも成功し、翻訳停止配列によって生じた翻訳途上ポリペプチド鎖の相互作用をin vivo光架橋法で詳細に解析できることを明らかにした。 さらに、M. succiniciproducens由来のSecM翻訳停止配列を鋳型に、その上流下流に異なるタグ配列を付加した「翻訳アレストカセット配列」の構築も行った。 以上のような進捗状況であるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に「翻訳停止カセット配列」の構築を達成した。本年度はそれを用いて、翻訳途上鎖での動態がよく調べられているタンパク質をモデル基質として利用し、提案する実験手法の有用性の評価を行う。 (A)膜タンパク質FtsQの翻訳途上相互作用動態の解析 膜タンパク質であるFtsQは翻訳途上時にシグナル認識粒子(SRP)やSecトランスロコンと直接相互作用することが知られており、in vitro解析からその相互作用部位およびタイミングが予測されている。提案する実験手法の妥当性を検証するために、このFtsQをモデル基質として利用し、過去の知見と同様の結果が得られるかを検証する。まず、(i)翻訳停止カセット配列をFtsQのORF領域内の様々な位置に挿入した融合体を系統的に構築し、それぞれが細胞内で安定に蓄積できるかを検討する。そして、(ii)様々な長さのFtsQ翻訳途上鎖を細胞内で蓄積させ、in vivo光架橋解析を行い、翻訳途上FtsQがSRPやSecトランスロコンと、先行研究で報告されたようなタイミング・様態で直接相互作用するかを検証する。 (B)親水性タンパク質LuxA/LuxBの翻訳途上複合体形成過程の解析 親水性タンパク質LuxBはパートナー因子のLuxAと複合体を形成する。この複合体形成はLuxBの翻訳している途上に起こることが示唆されている。しかしながら、その過程は多因子の関与も含めて不明点が多い。そこで、(A)FtsQの場合と同様の解析を進め、翻訳途上時LuxBのLuxAとの複合体形成過程を調べる。また、解析の際に、LuxA以外の因子との架橋が見られた場合は、その架橋産物を精製し、質量分析による解析を行うことで未知因子の同定も同時に行い、複合体形成過程の全貌を明らかにする。
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