RNAサイレンシングとは、小分子RNAによって誘導される塩基配列特異的な遺伝子発現抑制機構の総称であり、生物種間で高度に保存され、細胞内プロセスにおいて非常に重要な役割を担っている。ショウジョウバエにおいては、RNAサイレンシング機構の基本経路は明らかにされている。これまでに、申請者はショウジョウバエRNAサイレンシング活性中心体RISCに相互作用する新規因子群を多数同定した。その中の一つとして、miRNAによる遺伝子発現抑制機構の活性中心因子Ago1およびGW182の相互作用タンパク質として、Tdrd3を同定した。 Tdrd3の分子機能解析のため、マウスを用いて抗Tdrd3抗体の作製を行った。得られた抗体はS2培養細胞抽出液を用いたウエスタンブロッティングにて、内在性Tdrd3を特異的に検出することができた。現在、本抗体を用いたTdrd3複合体の精製、既知の因子と相互作用、細胞内局在性などの解析を進めている。また、S2培養細胞抽出液から得た抗Ago1抗体による免疫沈降物に、Tdrd3が含まれることを本抗体を用いて確認することができた。一方で、CRISPR/Cas9システムを用いて、Tdrd3ノックアウト(Tdrd3 KO)ショウジョウバエの作製に成功した。これを用い、Tdrd3 KOショウジョウバエの表現型の解析やmiRNA標的レポーター遺伝子をもつハエと掛け合わせることによるTdrd3の機能解析を進めている。 本研究により得た抗体や変異体を用いた詳細な解析により、miRNAを介したRNAサイレンシングにおけるTdrd3の分子機能の解明を進める。
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