研究実績の概要 |
動植物ともに、細胞がどの方向に分裂するかは、正常な発生に大きな影響を与える。被子植物において、主に微小管から構成されるプレプロフェーズバンド(PPB)が細胞分裂面の決定に必要であることが考えられてきた。しかし、PPB非依存的に細胞分裂面が決定がなされることが近年報告されており、未知の分裂面決定機構の存在が示唆されている。本研究は基部陸上植物ヒメツリガネゴケを用いてPPB非依存的な分裂面制御機構の解明を目的とする。この目的達成のために、1,脂質と細胞骨格を制御するアクチン結合タンパク質、微小管関連因子のライブセルイメージング、2,真核生物に広く保存される細胞分裂に必須なAuroraキナーゼに着目した研究を行った。 (これまでの成果) 1, 脂質と、細胞骨格を制御するアクチン結合タンパク質、微小管関連因子のライブセルイメージング ホスファチジン酸を可視化する形質転換体を作製して観察を行った結果、ホスファチジン酸が細胞質分裂時の細胞板に局在することを見出した。この結果はホスファチジン酸が細胞の極性の情報となり、細胞分裂面制御をする可能性を示唆している。次にホスファチジン酸の合成を阻害する薬剤を用いて、細胞分裂面制御への影響を観察した。薬剤処理をしたヒメツリガネゴケの細胞が致死になることから、ホスファチジン酸の細胞分裂面への影響を評価することは出来なかった。2,真核生物に広く保存される細胞分裂に必須なAuroraキナーゼに着目した研究 Auroraキナーゼの相互作用因子をLC/MS/MS解析によって複数同定した。その一つIlp1と名付けた遺伝子が、PP2A regulatory subunit(ホスファターゼ)と相互作用することを見出した。Ilp1がキナーゼ活性とホスファターゼ活性のバランスを取り、細胞分裂面制御をしている可能性を見出した。
|