シロイヌナズナSOG1(AtSOG1)のアミノ配列情報に基づきイネSOG1遺伝子を探索し、AtSOG1が持つ5つのATMリン酸化サイト(SQモチーフ)をすべて保存している遺伝子(OsSOG1)と部分的に保存している遺伝子(OsSOG1-like)を同定した。これまでに標的組換え(ジーンターゲッティング)によりOsSOG1およびOsSOG1-like遺伝子のプロモーター下流にGUSレポーター遺伝子をノックインすることで、OsSOG1あるいはOsSOG1-like遺伝子をノックアウトした系統、OsSOG1あるいはOsSOG1-likeのリン酸化サイトを不活性型に置換した変異系統を作出した。OsSOG1およびOsSOG1-likeは機能相補していることも考えられることから、CRISPR/Cas9によりOsSOG1およびOsSOG1-like両遺伝子をノックアウトした二重変異体系統も作出した。これら変異体のT2世代を用いて以下の解析を行った。 イネ野生株(日本晴)および上記変異体系統をDNA二重鎖切断(DSBs)を誘発する薬剤であるブレオマイシンで処理しmicroarray解析を行った。その結果、野生株において発現が変化していた多数の遺伝子群が、Sog1変異体およびsog1sog1-like二重変異体において発現変化が抑制されており、これらの遺伝子はSog1の標的遺伝子であることが示された。これらの遺伝子群の中には、酸化的ストレス防御に関する遺伝子やDNA修復に関わる遺伝子、転写制御に関わる遺伝子などが含まれていた。DNA修復に関わる遺伝子群の中には、相同組換えに関わる遺伝子だけでなく、複数の経路に関与する遺伝子が含まれていた。また、Sog1-likeはSog1の標的遺伝子であり、Sog1標的遺伝子群の中の一部がSog1-likeを介して発現を制御されていることが考えられた。
|