本研究の目的は、Leptothrix ochraceaがどのようにして酸化鉄を生成するのかを可視化し、生成機構の一端を明らかにすることにある。加えて、培養方法を確立し、培地の制御によりこれまでにない管状酸化鉱物を創造することで、新しい機能性材料の創出方法の確立を目指している。 L. ochraceaの酸化鉱物生成過程を可視化するためには、光学顕微鏡や電子顕微鏡といった顕微鏡設備が必須となる。そのため、高精細画像取得を目的とした光学顕微鏡設備を整えるためOLYMPUS社製BX-53光学顕微鏡システムを購入、整備した。その結果、倍率1000倍までの高精細微分干渉像を得ることが可能となり、非染色の菌体をそのまま観察可能となった。一方、自然環境に近い状態での地下水培養実験を進めるために、L. ochracea生菌が豊富に含まれる菌体採取場所の確保が早急に必要であった。これまでの予備研究によりL. ochraceaは非常に増殖サイクルが早く短命であることが示唆されていることから(未公表データ)、遠方の菌体採取地で採取するよりも研究実施場所(東京都文京区)近隣におけるL. ochracea菌体の採取地を確保することが望ましいと考え、都内の湧水箇所や池、側溝等を探索し、黄褐色の沈殿物の発生個所から沈殿物を採取し、顕微鏡観察により管状酸化鉱物の生成や菌体の有無の確認を並行して進めた。その結果、生菌が生息する箇所は発見されたものの、場所の管理者からの許可が得られず継続的に採取可能な場所は未だ確保できていない。
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