研究課題/領域番号 |
19K21194
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 智子 日本女子大学, 理学部, 助教 (30623772)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 鉄酸化細菌 |
研究実績の概要 |
ある種の鉄酸化細菌は、細胞外に中空の管状やらせん状の人工合成不可能な鉄酸化物構造体を形成する。本研究では、当該細菌の培養法を考案・駆使して、酸化鉱物の形成機構をイメージングにより可視化し、生成機構の一端を明らかにすることを目的としている。また、その生成を人為的に制御して細菌由来の新規素材生成法の確立を目指すものである。当初想定・確保していた試料の採取場所からの採取が困難となったことから、本菌が生息し、且つ新鮮な状態で採取できる場所を調査、探索した。そのうち都内1か所の公園内において、湧水が引かれ人工のせせらぎが形成されており、その底には一面茶褐色の沈殿物が付着する場所を発見した。そこでは容易に沈殿物の採取が可能であり、そこから5地点に分けて茶褐色の沈殿物を採取し解析した結果、4か所では粒状の酸化鉄が多く2か所で中空・管状の酸化鉄が混じって存在した。また、わずかであるがらせん状酸化鉄もみられた。しかしながら、目的細菌が優先的に生息する状態ではなく、形成された酸化鉄も新鮮なものではない可能性が高かったが、これら沈殿物を同時に採取した地下水をベースとした培地に移植し、鉄源を純鉄片として集積培養を試みた。その結果、酸化鉄を生成し、優位に増殖する細菌を得ることはできなかった。採取した管状酸化鉄について、走査電子顕微鏡(SEM)解析、ならびに元素分析(EDX)した結果、鉄の含有量が多く、ケイ素、マグネシウム、リン、塩素を少量含むことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していた試料の確保が困難であること、新しい採取場所の選定が遅れていることが最大の理由である。遅れている理由として、2019年度までは、産前産後休暇ならびに育児休業の取得による研究期間および勤務時間の短縮のためであり、2020年度はさらにコロナ禍における緊急事態宣言下での研究活動の制限が大きな理由として挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の目的である酸化鉱物生成機構の一端を明らかにすることを優先し、予備研究において得られている地下水培養物の電顕試料について、微細構造解析を行う。すなわち、比較的高頻度で生きた当該細菌が存在する新しく形成された酸化鉱物沈殿物を採取したものを激しく懸濁後、1.2 μmのメンブレンフィルターに通すことで、菌体と酸化鉱物を分離させ、フィルターを通過させた菌体懸濁液を、フィルター滅菌した地下水に戻すことで、経時的に増殖した酸化鉱物の樹脂包埋試料を用いる。これをFE-SEMを用いた連続超薄切片アレイ・トモグラフィー法により、3次元立体構築し、管状酸化鉄がどのように形成されていくのかを明らかにする。また、STEM-EDXによる元素分析により、どの時点でどのような元素が酸化鉱物に付加されていくのかをナノレベルで明らかにする。当初の予定では3次元立体構築は困難と判断し、計画からは除外していたが、自身の技術更新と使用機器の高度化により現時点では可能と考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、研究遅延やコロナ禍による研究の制限により、当初予定していた実験が実施できず、研究発表にも至らず計画していた旅費の使用もなかったことから未使用となった。次年度においては、遅延した研究計画の遂行のため、また、研究成果発表のために使用する。
|