障害が蓄積したミトコンドリアは、PINK1とParkinを介したミトコンドリア品質管理機構により、積極的に細胞から排除される。ミトコンドリア品質管理は生理的条件に応じて細胞側から様々な調節を受けていると考えられるが、その調節機構については明らかではなかった。これまでに研究代表者は、ミトコンドリア品質管理が細胞質のcAMP/PKAシグナル経路を介して調節されていることを明らかにした。そこで本研究では、リン酸化を介したミトコンドリア品質管理の調節機構の解明を行い、ミトコンドリア品質管理が細胞環境に応じて分子レベルでどの様に調節されているのか明らかにすることを目指した。 1)PKAはミトコンドリア内膜タンパク質MIC60をリン酸化することでミトコンドリア品質管理を負に制御することが分かっている。MIC60のリン酸化の分子機構を明らかにするために、MIC60の様々な変異体を用いて動物細胞における解析を行ったところ、MIC60の局在に応じてリン酸化の表現系が異なることがわかった。本成果は、オルガネラタンパク質のリン酸化の分子機構について新たな知見を与えると考えられる。 2)リン酸化を介したミトコンドリア品質管理の制御について生理的意義を明らかにするために、動物細胞におけるリン酸化MIC60の可視化を試みた。リン酸化MIC60を特異的に認識するモノクローナル抗体を作成し、免疫蛍光染色法によるリン酸化MIC60の細胞内局在の解析を行った。様々な条件について検討したところ、MIC60のリン酸化が促進される条件において細胞内におけるリン酸化体の可視化が可能になることがわかった。この条件をもとに、今後リン酸化MIC60の細胞内局在について解析を進める予定である。
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