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2020 年度 実施状況報告書

房総半島南部における最終氷期末期以降の照葉樹林の分布拡大に黒潮が与えた影響

研究課題

研究課題/領域番号 19K21202
研究機関千葉県立中央博物館

研究代表者

西内 李佳  千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (70828805)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード完新世 / 房総半島 / 花粉分析 / ボーリングコア
研究実績の概要

本研究は、千葉県房総半島南部の2地点の最終氷期末期以降(約1万年前以降)の地層に含まれる植物化石(主に花粉化石)に基づいて、照葉樹林の成り立ちに黒潮が与えた影響を明らかにすることを目的として行われた。同時代の、河川、湿地、海といった様々な堆積環境の試料を分析することによって、植生の空間的な分布の推定に繋げることができると考えられる。
2020年度は、房総半島南部の外洋側である千葉県南房総市の丸山川低地で採取したボーリングコア試料と、東京湾側の館山平野のボーリングコア試料の実験・分析を進めた。いずれの試料も花粉化石の含有量が少なく、花粉化石では検出できない樹木種の繁茂など、房総半島ならではの原因を考える必要性が示唆された。また、最終氷期以降の照葉樹林の形成過程、黒潮の過去の流路、照葉樹の花粉形態や種実形態などについての文献を調査・収集した。本研究では、乾燥・寒冷気候が卓越した最終氷期最寒冷期には照葉樹林は分布域を縮小し、限られた地点(レフュージア:逃避地)に分布していたと考えている。分布域が縮小していた時代には、その植物が近隣に生育していても堆積物中に含まれる花粉化石は微量となり、別の半島等の遠方から風に乗って飛来する空中花粉と区別するのは難しい。このような問題は、花粉化石に基づく古植生推定の際には常に考慮すべき事柄であり、基礎的研究として、大気中における花粉の挙動について珪藻との比較を行い共著論文を発表した(2020年12月)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験設備などの研究環境の整備に予想以上に時間がかかってしまい、試料の分析が遅れている。使用薬品のうち特に危険な薬品について、2019年度には使用できる状態となったが、今後永続的に使用可能な状態にするには、使用許可申請を行う必要が新たに生じた。そのため、県の対応部署と協議したり、申請のための書類を揃えたり作業環境測定を行ったりした。
2020年度は、所属機関である博物館の想定外の業務が重なり、当番業務や消毒作業など新型コロナウイルス感染拡大防止に関連した業務が増加した。また、交代勤務によって分析作業を行う時間が極端に減り、担当展示の開催期間延長や、開催期間変更に係る業務にも忙殺された。そこで、2021年度まで補助期間を再延長する申請を行い、受理された。

今後の研究の推進方策

今後は、館山平野1地点と丸山川低地2地点の計3地点のコア試料の植物化石分析(主に花粉分析)を進め、堆積環境と周囲の地形を考慮し、それぞれの地点周辺での照葉樹林を含む植生の空間的な分布とその変遷を明らかにする。この結果と、気候や黒潮の変動を比較し、植生変遷との関係について考察する。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、所属機関の博物館では業務量が増加している。その上に緊急事態宣言が発令された場合、交代勤務が再開し、分析作業にあてられる時間が極めて少ない状態となってしまう。そこで、花粉分析試料として最も適した泥炭層であり、最も古い年代までの堆積物が採取できている西原地区のボーリングコア試料を優先的に分析し、植生変遷と黒潮の関係を議論する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は、所属機関である博物館の想定外の業務が重なり、当番業務や消毒作業など新型コロナウイルス感染拡大防止に関連した業務が増加した。また、交代勤務によって分析作業を行う時間が極端に減り、担当展示の開催期間延長や、開催期間変更に係る業務にも忙殺された。
2021年度は、遅れている花粉分析を進め、堆積環境と周囲の地形を考慮し、照葉樹林を含む植生の空間的な分布とその変遷を明らかにする。この結果と、気候や黒潮の変動を比較し、植生変遷との関係について考察する。国内学会での研究発表、国内研究雑誌への論文投稿を予定している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Characteristics of floating diatoms as fine particles in the lower atmosphere -A case study in Ogata Village, Akita, Japan, during August 2019 and January 20202020

    • 著者名/発表者名
      T. Chiba, R. Nishiuchi, and A. Tuji
    • 雑誌名

      Diatom

      巻: 36 ページ: 1-12

    • DOI

      10.11464/diatom.36.23

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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