研究実績の概要 |
電気生理学的手法を用いて、柔軟な行動調節の背景にある大脳皮質-基底核-視床回路の調節機構について研究をおこなった。 時間生成課題に関して、計る時間長の長さと線条体フィールド電位(Local Field Potentials, LFP)低周波成分との相関に関して解析をおこない、時間を計りはじめる直前のLFP低周波数成分のパワーが計る時間長が長いときほど大きくなることを明らかにした(Suzuki and Tanaka, Communications Biology, 2019)。LFP低周波数成分が大脳皮質-基底核経路の機能結合の動的な成分を反映することが示唆されてきたことを考えると(Courtemanche et al., 2003;Brown & Williams, 2005; Leventhal et al., 2012) 、今回みられたLFP活動の変化はその後の計時関連神経活動を調節するような神経現象を反映しているのかもしれない。特に大脳皮質-基底核-視床ループにおいて計時中のニューロン活動が計る時間長に応じ時間方向に柔軟に伸縮することが知られ、このメカニズムの解明が重要とされてきたが、計時開始前から大脳皮質-基底核経路の機能結合が調節されることが鍵である可能性が示唆された。 大脳皮質微小電気刺激に対する線条体LFP応答を調べたところ、実際に時間長依存性が観察されたため、上述の仮説が支持された。一頭の動物からデータを取得しており、研究成果は2018年11月の北米神経科学大会(San Diego)で発表した。 また、運動性視床の神経活動と時間生成との相関に関しては2頭分のデータをまとめ2018年11月の日本生理学会北海道地方会(札幌)にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気生理学的手法を用いて、柔軟な行動調節の背景にある大脳皮質-基底核-視床回路の調節機構について研究をおこなってきた。 計時中の線条体フィールド電位(Local Field Potentials, LFP)の研究に関しては追加の解析をおこない、研究成果を研究成果を論文として発表することができた(Suzuki and Tanaka, Communications Biology, 2: 102, 2019)。 微小電気刺激を用いた実験に関しては、質の良い(ノイズの少ない)LFPデータを得るのに時間を要したがいくつかの工夫を凝らすことで一頭のサルからデータを取得することができた。研究成果は2018年11月の北米神経科学大会(San Diego)で発表している。 また、運動性視床から単一ニューロン活動の記録をおこない、時間生成との相関に関し2頭分のデータをまとめ2018年11月の日本生理学会北海道地方会(札幌)にて発表した。これに加え、同一視床ニューロンがアンチサッカード課題においてどのような活動の挙動を示すのか調べた研究もおこなっている。3頭目の訓練もすでに完了しており、現在はこの個体で実験をおこなっている。今後データの頑強性を確認していく。また詳しい解析を進め、論文としてまとめ国際誌に発表する予定である。 このようにおおむね順調に研究が進展している。
|