研究課題/領域番号 |
18H06084
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 知成 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (50827087)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | マウス / マーモセット / 背側視覚野 / 運動パターン情報処理 / シナプス入力イメージング |
研究実績の概要 |
物体の“動き”に関する視覚情報は、大脳皮質の背側に位置する多数の視覚領野からなる階層的な神経経路によって処理される。低次視覚野の細胞は単純な動きの情報(線分の動く方向)を処理し、背側経路に属する高次領野の細胞は複数の線分の動きを統合し、大局的な運動パターンを処理する。しかし、低次領野から高次領野の細胞にどのような情報が入力し、統合されるかという詳細なメカニズムはまだ分かっていない。本研究では、マウス・マーモセット視覚野と広域・二光子Ca2+イメージングを組み合わせて、背側視覚野の細胞へのシナプス入力を解析し、局所的な運動情報が大局的な運動パターンへ統合される情報処理メカニズムを解明する。 異なる方向に動く縞模様刺激を組み合わせて格子状刺激を作成した場合、格子状刺激は縞模様刺激の運動要素を統合した方向へ動いていると認識される。霊長類と齧歯類の背側経路に属する高次視覚野middle temporal area(MT野/V5)とrostrolateral area(RL 野)には、この格子状刺激の動く方向を選択的に処理する神経細胞(pattern selective cell)が存在する。 昨年度はマウス・マーモセット脳アトラスを基準とし、マウスRL 野とマーモセットMT野にカルシウム感受性タンパク(GCaMP6s)をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)を注入し、GCaMP6s を神経細胞に発現させた。次に、複数の視覚領野を含む広範囲に神経活動を観察することができる広域Ca2+イメージングを行い、retinotopic mapping法(Murakami et al., 2017)を用いてMT 野・RL 野の詳細な位置を同定した。これらの領野で視覚刺激と二光子イメージングを用いてpattern selective cellを同定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス、マーモセットの両種でのCa2+イメージングが可能となり、pattern selective cellの観察に成功しており、順調に次のステップ(スパイン入力イメージング)へと進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はシナプス入力を観察する実験系を立ち上げ、データ取得ができるようにすることを目標とする。まず、ウイルスの注入濃度を下げ、GCaMP6s を神経細胞にスパースに発現させる。次に、広域Ca2+イメージングを用いてMT 野・RL 野の詳細な位置を同定する。RL野・MT 野の神経細胞において、視覚刺激と二光子イメージングを用いてpattern selective cellを同定し、樹状突起シナプスの視覚応答を観察する。視覚刺激は複数の方向に動く縞模様刺激、格子状刺激、さらにドット状刺激を提示し、樹状突起シナプスにおいて各刺激に対する視覚応答特性をマッピングする。ドット状刺激は線分の要素を持たないため、縞模様刺激と比較することで動きの情報についてより詳細に解析することが可能となる。
|