研究課題/領域番号 |
18H06085
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
羅 媛君 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任研究員 (00822347)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | CreERマウス / タモキシフェン / 神経細胞誕生日 / 小脳 / 下オリーブ核 / 橋核 / 区画構造 / 神経投射パタン |
研究実績の概要 |
平成31年度(初年度)は、本研究で用いる誕生日標識CreERマウス(G2Aマウス)の繁殖を開始し、さらに、交配させるレポーターマウスとして、Ai9-AldocVenusダブルホモマウス(dHマウス)を作製した。G2Aマウス(オス)とdHマウス(メス)を掛け合わせ、妊娠10.0日目から13.0日目まで、半日おきのタイミングのいずれかでタモキシフェンを投与して、仔を得て、継母に育てさせ、生後40日で還流固定して脳標本を得るという実験系を確立した。脳の観察にて、タモキシフェン投与のタイミングに応じて、異なる神経細胞群が蛍光(tdTomatoによる赤蛍光)で標識されており、このシステムが、期待通り誕生日依存性の脳の区画構造の解析に利用できることを確認した。脳のほとんどの部位で良好な発現認められるが、小脳核ではおそらくAi9マウスの特性のためか、発現が弱いことも確認した。10.0日目から13.0日目まで、系統的にサンプルが得られたので、脳全体で50マイクロメータ-の厚さの切片を切り、緑で標識されているアストロサイトと小脳の縦縞構造のマーカーであるAldocの発現とも合わせて脳切片を系統的に写真撮影することで、レポータータンパク質の発現分布を系統的に観察している。特に、小脳皮質、下オリーブ核、橋核、および前庭神経核において、誕生日依存的な区画構築を解析しつつある。小脳皮質と下オリーブ核については、ほぼ解析が終了し、論文を準備している。 さらに、並行して以前から行っていた関連したプロジェクトの論文3篇が平成31年度に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CreERマウス、タモキシフェン投与、帝王切開による胎仔摘出、継母による子育てなどの技術的な点、我々にとって初めての経験であったが、実験が順調に進むようになってきている。G2Aマウス(オス)とdHマウス(メス)の交配は順調に進み、妊娠10.0日目から13.0日目まで、半日おきのタイミングのいずれかでタモキシフェンを投与して得られた個体のサンプルが系統的に得られている。連続切片の写真を効率よく撮影することも、タイリングの機能を蛍光顕微鏡のソフトに取り入れたことで、可能となり、系統的に撮影を行っている。小脳皮質、下オリーブ核、橋核、および前庭神経核において、誕生日依存的な区画構築を解析しつつある。小脳皮質と下オリーブ核については、ほぼ解析が終了し、論文を準備している。このように概ね順調に進捗している。 さらに、並行して以前から行っていた関連したプロジェクトも、本研究のために中断してしまうことなく、継続して行い、論文3篇が平成31年度に発表され、さらに1本の論文を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、前年度から行っている、脳幹神経核における誕生日依存的区画の系統的な解析を継続し、さらに、誕生日依存的区画の神経投射の特異的標識による誕生日依存的神経回路の解明を進める。誕生日依存的区画の系統的な解析としては、小脳核、下オリーブ核、橋核、および前庭神経核において、誕生日依存的な区画構築を解析する。三次元的な神経細胞の分布の解析は、既に導入済みの三次元グラフィックソフトウエアRhinocerosを用いる。これらの手法により、小脳核と下オリーブ核、橋核、前庭神経核など小脳との関連の強い脳幹の主要な神経核において、誕生日依存性の区画を明らかにする。 誕生日依存的神経回路の解明としては、上の解析で発見された誕生日特異的な領域の興味深い箇所について、神経投射の標識を行い、神経回路の部位対応的な結合に関して、誕生日を同じくする区画同士が連絡しやすいような関係があるかどうかの解明を試みる。これには、誕生日依存的なCre発現を利用して、Cre依存的に蛍光タンパクを発現するfloxアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって標識される神経投射パタンを解析する。または、蛍光トレーサーによって、神経投射パタンを解析する。そのような手法により、神経投射パタンと誕生日依存性区画構造との関連を解析する。
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