研究課題
(具体的内容)他施設で行われた、睡眠時のヒト脳皮質電気刺激介入によるネットワークの変容に関する研究や、皮質電気刺激や課題が電気刺激誘発性のてんかん性放電様活動に与える影響をみた研究に関し考察を加え、国際専門誌に諭説(Editorial)を投稿して受理された。また、本邦のてんかん学会年次集会のシンポジウムでも睡眠と皮質興奮性に関する内容を発表した。以上の中で、1.皮質興奮性や情報伝播様式と睡眠段階には密接な関係があること、2.臨床応用も鑑みて、皮質以外に深部核の関与を想定したうえでの更なる検討が必要と考えられることを示した。睡眠段階や部位による徐波と高周波の周波数帯域間の活動相関の変化に関して検討し、深い睡眠中のノンレム睡眠では全体に上昇し、夢を見やすいと言われているレム睡眠では脳の後方領域で上昇することを示した(投稿準備中)。さらに、今回の研究と関連して作成した解析プログラムを利用して、慢性硬膜下電極留置症例における視覚課題時の神経活動に関して、ヒト脳内有向ネットワークの言語優位・非優位半球での違い、視覚刺激の生物・非生物による違いに関して解析を行った。その結果、後頭葉・側頭葉底面後方では言語非優位半球内での情報伝播が優位半球より大きいこと、同部位では生物・非生物で伝播様式に違いがあることを見出し、学会発表した。(意義・重要性)本研究により、ヒト大脳皮質の有向ネットワークの生理的変容の一端を覚醒時活動や睡眠の立場から明らかにできた。またこれを踏まえて研究方法の発展性、臨床応用をどうするべきかについても考察し、社会に広めることができた。
2: おおむね順調に進展している
・睡眠に関する追加データを得ることはできなかったが、研究結果をもとに睡眠のネットワーク変容に関する知見をまとめることができた。・本研究の過程で培った解析手法を、覚醒時に行われる他の課題(皮質単発電気刺激でなく他の視覚や課題による刺激)の解析に応用した。
慢性硬膜下電極留置を必要とする患者さんが減少していることから、新たに同様のデータを蓄積することは困難になってきている。このため、当施設で行ってきた前述の覚醒時の各種の課題での有向ネットワークの変容の解析を行いつつ、国際共同研究も進めていく予定である。
本研究計画に必要な頭蓋内電極留置手術症例の当施設での減少により、研究データの取得が遅れ、また、研究代表者の学内業務が多忙で解析も中途であった。繰越金102,123円を次年度に使用し研究を継続していく予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Clinical Neurophysiology
巻: 131 ページ: 463~464
10.1016/j.clinph.2019.11.010
巻: 130 ページ: 2164~2165
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医学のあゆみ
巻: 270 ページ: 529~536