研究課題/領域番号 |
18H06095
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大久保 佑亮 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 主任研究官 (80596247)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | Notchシグナル / Deltaシグナル / クラスター化タンパク質 / iPS細胞 / ドーパミン作動性神経細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト多能性幹細胞由来の神経前駆細胞を用いた再生医療の大きな課題は、大量の移植細胞数の確保及び、機能的な細胞への分化成熟法の確立である。Notch-Deltaシグナルは、周囲の細胞と協調しながら必要な細胞分裂と細胞分化を供給することで組織形成を行う。これは逆に、Notch-Deltaシグナルを人為的に制御することで、目的に応じ細胞集団の振舞いを調節可能であることを示唆する。Notchシグナルは神経前駆細胞の自己複製を制御する一方で、申請者はその隣接細胞では逆方向にDeltaシグナルが伝達され神経分化を促進することを発見した。本研究は、パーキンソン病の治療に用いられる中脳ドーパミン作動性(mDA)神経細胞の分化法をモデルとして、申請者らが開発したシグナル伝達能を飛躍的に高めるタンパク質のクラスター化技術を用い、Notch-Deltaシグナルを双方向に活性化することで、hPSC由来神経前駆細胞の自己複製を促しmDA神経細胞への分化率を改善する。 平成30年度は、Notchシグナル、Deltaシグナルそれぞれを活性化するためにDelta like 1(Dll1)、Notch1タンパク質を作製し、各々のタンパク質をヒアルロン酸へクラスター化しシグナル活性化能の向上を試みた。Dll1に関してはタンパク質の作製・精製・クラスター化に成功し、Notchシグナルが効率よく活性化する条件を明らかにした。一方、Notch1に関してはDll1と同様の条件ではタンパク質の作製が不十分であることが明らかになった。そこでタンパク質の作製・精製の条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質の作製・精製・クラスター化に関しては順調に進んでいる。クラスター化タンパク質のシグナル活性化能を測定するためにNotchシグナルレポーター細胞を数株樹立したが、いずれもクラスター化Dll1の活性化能の測定には適さなかった。そこで、ラット神経前駆細胞を用いNotchシグナル標的遺伝子発現を調べることで活性化能を測定した。 また、タンパク質の分子量が小さいほど多くのタンパク質をヒアルロン酸にクラスター化できシグナル活性化能も高くなる傾向にあるために、本研究ではDll1とNotch1の最小活性部位を用いタンパク質を作製している。順調にタンパク質を作製できたDll1は内在のシグナルペプチドを利用できたが、Notch1は新たにシグナルタンパク質を付加する必要があり、コンストラクトから作製し直した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、まずNotch1タンパク質の作製・精製・クラスター化を行い、Deltaシグナルが効率よく活性化する条件を明らかにする。また、iPS細胞をmDA神経細胞へ分化させる際に、クラスター化Dll1やクラスター化Notch1を用い細胞数や分化率における影響を調べる。最後に作製したドーパミン神経細胞をラットの線条体に移植し6週間後の生存率を調べる。
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