研究課題/領域番号 |
18H06101
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 顕 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (80823343)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / グリア細胞 / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
認知症の主要な原因疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)の中核となる病理は、アミロイド β(Aβ)・タウ蛋白の異常蓄積であり、これらは神経変性につながる主要因子である。本疾患における現行の治療薬はこれらの因子の制御ではなく対症療法の域に留まっているため、その克服に向けた社会的要請は強い。従って、本疾患の病因と病態関連シグナルを明らかにし、病態に即した革新的治療法を開拓するための基盤整備が必要である。これまで、ADの病態研究は主に神経細胞にフォーカスしたものであった。一方でAD脳の老人斑に集簇するグリア細胞の一種であるミクログリアは、Aβクリアランスや神経炎症 に寄与し、ADの病態に関与することが示され、近年注目されている。このような背景から、 本研究ではAD病理における炎症関連因子とその制御機構の解明およびAppNL-G-Fマウス(APP-KIマウス)と早期AD脳を用いた炎症関連遺伝子発現解析とその制御因子の探索の2つの研究目標を設定して研究を遂行する。今年度はIFN-γで炎症性に誘導した培養ミクログリアに対してSOCSファミリー遺伝子の阻害剤として知られているXの添加により、SOCSファミリー遺伝子の発現低下とそれに伴う炎症性サイトカイン(Cxcl10やTnf-α)の発現低下が確認できた。さらに、5ヶ月齢のAPP-KIマウスに対してXを連続投与し、物体認知記憶を評価する新奇物体探索試験など行動解析を行い、X投与によるAD病態への影響を評価した。その結果、Xの反復投与はAPP-KIマウスにおける認知機能低下の改善傾向が得られた。また、行動解析後に脳を摘出し、組織免疫染色法で大脳皮質におけるAβ蓄積を評価した結果、X投与群ではAβ蓄積の低下傾向が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroにおいてSOCSファミリー遺伝子の阻害剤の炎症抑制が確認でき、in vivoでの阻害剤Xの評価についても改善傾向が得られた。これらのことからSOCSファミリー遺伝子発現調節によるAD病理の改善傾向が得られてきているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き5ヶ月齢のAPP-KIマウスにXの反復投与を行い、行動解析・免疫染色の追加実験を実施する。また、投与後の脳サンプルについて磁気細胞抽出法により各種グリア細胞を抽出して炎症性サイトカインの発現量を細胞特異的に解析することで目標としてきた「炎症関連因子とその制御機構の解明」を達成する予定である。また、本研究のもう一つの目標である「APP-KIマウスと早期AD脳を用いた炎症関連遺伝子発現解析とその制御因子の探索」については、早期AD患者脳とAPP-KIマウスから抽出したミクログリアのRNAを用いて次世代シークエンスを現在進めており、治療標的となりうる神経炎症関連遺伝子プロファイルの作製を進める予定である。
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