研究課題/領域番号 |
18H06102
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原 康雅 千葉大学, 大学院薬学研究院, 特任助教 (10824625)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 共培養 / 海洋由来真菌 / ミコール酸含有細菌 / 微生物資源 / 培養抽出物ライブラリー |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物間の相互作用を活用するため共培養により休眠している生合成遺伝子の活性化を行い、1)新たな培養抽出ライブラリーの構築による二次代謝産物探索資源の高度化、2)共培養選択的に産生される二次代謝産物の単離・構造決定、3)休眠遺伝子活性化機構の解析を進めることを計画している。本年度は、1)および2)に重点を置き、研究を行った。 共培養には、独自に保有する、海綿などの底生海洋生物や様々な海洋環境由来の海沙から分離した2000株以上の海洋由来真菌株のうち、2014年から2016年に分離した真菌株を使用した。それら真菌株の単培養抽出物が抗菌活性および細胞増殖阻害活性を示さなかった真菌295株に関して、ミコール酸含有細菌Mycobacterium smegmatisとの共培養を行い、培養抽出物ライブラリーを構築した。得られた培養抽出物の抗菌活性と細胞増殖阻害活性を測定した結果、2株の培養抽出物に共培養条件選択的な細胞増殖阻害活性が見られた。そこで、2015年に海綿から分離した真菌Aspergillus niger 15F41-1-3株に着目したところ、生物活性以外の共培養選択的な変化として、橙色色素の産生やlinoleyl ergosterolの産生を確認した。そこで次に、細胞増殖阻害活性を指標に、A. niger 15F41-1-3株とM. smegmatisとの共培養抽出物を溶媒間分配、各種カラムクロマトグラフィーで精製を進めた。その結果、共培養条件選択的に産生される活性成分として環状ペプチドmalformin Cを単離・同定した。また、共培養選択的に産生される化合物として3種の化合物を単離した。さらに、本真菌株の二次代謝変化の機序について検討した結果、本真菌株のmalformin Cの産生には、生細菌と真菌の直接的な接触が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成30年度の計画では、a)これまでの培養条件では生物活性を示さなかった真菌株をミコール酸含有細菌であるM. smegmatis 存在下または非存在下で培養して、培養抽出物ライブラリーを作成し、共培養選択的に生物活性を有する二次代謝産物を産生する真菌株を選出すること、b)休眠遺伝子活性化機構の解明の検討(平成31年度まで)を行う予定であった。 a)に関しては、培養抽出物ライブラリーの構築した後、生物活性を有する二次代謝産物を共培養特異的に産生する真菌2株を選択した。その内1株に関して、活性化合物や共培養選択的に産生される化合物の単離に至っている。 b)に関しては休眠遺伝子活性化におけるM. smegmatisの役割について、直接的な接触の必要性、生存の有無の重要性、分泌される分子の重要性の3点について検討し、生細菌と真菌の直接的な接触が重要であることが示唆された。 以上の結果から、研究課題は順調に進んでいたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、海洋由来真菌とミコール酸含有細菌による共培養により研究課題を遂行してきたが、平成30年度中に研究代表者の所属が変更したため、研究内容の変更を行うこととした。 平成31年度 (令和元年度) は、休眠している生合成遺伝子の活性化による新規二次代謝産物の取得を目指して、現所属研究室が独自に保有する2000株以上の日本国内より分離された放線菌等を活用した共培養を行うことで、高度化した新たな培養抽出物ライブラリーを構築する。また、培養抽出物のがんおよび感染症に関する生物活性評価、LC-MS による網羅的二次代謝産物分析から、構築したライブラリーの有用性を実証し、さらに共培養選択的に産生される二次代謝産物の単離・構造決定を行っていく予定である。
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