本研究では、微生物間の相互作用を活用した共培養法を用いることで、休眠している生合成遺伝子の活性化を行い、[1]新たな培養抽出ライブラリーの構築による二次代謝産物探索資源の高度化、[2]共培養選択的に産生される二次代謝産物の単離・構造決定を実施した。 共培養には、独自に保有する、1) 海綿などの底生海洋生物や海沙から分離した2000株以上の海洋由来真菌株のうち2014年から2016年に分離した真菌株および2) 2000株以上の日本国内より分離された放線菌株を使用した。 1)において、2015年に海綿から分離した真菌Aspergillus niger 15F41-1-3株とミコール酸含有細菌Mycobacterium smegmatisの共培養を行った。得られた共培養抽出物の生物活性を測定した結果、各単培養抽出物とは異なり、共培養条件選択的な細胞増殖阻害活性が見られた。そこで細胞増殖阻害活性を指標に、A. niger 15F41-1-3株とM. smegmatisとの共培養抽出物を分画した結果、共培養条件選択的に産生される生物活性成分としてmalformin Cを単離した。また、共培養選択的に産生される3種の化合物 TMC-256A1、desmethylkotanin、aurasperone Cを単離した。これら4つの化合物はA. nigerの別の単培養条件にて既に単離が報告されていることから、本研究の培養条件では、M. smegmatisが、休眠状態にある4種の化合物に対応する真菌の生合成遺伝子クラスターを活性化している可能性が示唆された。 2)において、放線菌株の単培養抽出物が抗菌活性を示さなかった放線菌805株に関して、同一環境で分離した放線菌の組み合わせで2種の放線菌による共培養を行った。得られた共培養抽出物の抗菌活性を測定した結果、26種の共培養抽出物に抗菌活性が見られた。
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