本年度は、抗体医薬品によるインフュージョンリアクション (IR) の発現に関連する因子について、下記のような結果を得た。 1) 昨年度に引き続き、大阪大学医学部附属病院血液腫瘍内科において、2013年9月~2018年12月にリツキシマブを初回投与された232症例を対象としたレトロスペクティブ調査を行った。臨床検査値として白血球数、赤血球数やヘモグロビン値などの一般血液検査値および肝機能・腎機能等に関する生化学検査値を収集した結果、白血球数、リンパ球数および乳酸脱水素酵素 (LDH) がIRの発現ならびにその重症度と相関することが判明した。 2) 性別および腫瘍の組織型がリツキシマブによるIRの発現と関連することが確認された。 3) 包括同意のもとリツキシマブ投与前に採取され保管されていた血液検体を用いて、免疫学的因子 (サイトカインおよびケモカイン) の測定を実施した。その結果、腫瘍の組織型の違いにより免疫学的因子の血中濃度に差があることが判明した。また、腫瘍の組織型ごとにIRの発現と免疫学的因子の関連性を解析したところ、いくつかの免疫学的因子がIRの発現と有意に関連することが示された。 4) リツキシマブと同じ抗原であるCD20に対する新規抗体医薬品であるオビヌツズマブ (2018年承認) についても同様にレトロスペクティブ調査を開始した。症例数はまだ十数例であるが、IRの発現頻度は約55%と高いことが判明した。 以上より、リツキシマブの投与において、性別・腫瘍の組織型だけでなく、臨床検査値および免疫学的因子をもとにIRの発現を予測できる可能性が明らかとなった。本研究成果は、IRの発現を回避・軽減する手法の開発に貢献し、臨床現場において副作用に苦しむ患者や副作用への対応に追われる医療従事者の負担軽減につながることが期待される。
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