研究課題/領域番号 |
18H06106
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 庸輝 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 助教 (60711786)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | HMGB1 / DAMPs / 慢性疼痛 / 脳内疼痛制御機構 / 脳内炎症 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、1) damage-associated molecular patterns (DAMPs) の一種である high mobility group box 1 (HMGB1) の慢性疼痛時の脳内における役割を詳細に検討すること、並びに 2) 1) を基盤に化合物ライブラリのスクリーニング系及び人工脊髄脳関門等の独自に構築したスクリーニング系を活用して中枢移行性判定法を確立し、有用性の高い新規鎮痛薬候補を開発することを目的とする。これまでに申請者は、神経障害性疼痛モデル動物の脊髄や損傷した知覚神経の周囲において HMGB1 が炎症を惹起し、慢性疼痛の発症に寄与する可能性を報告している。さらに、本研究課題の予備試験として、脳内の HMGB1 が増加することや、リコンビナント HMGB1 を脳室内へ投与することにより持続的な痛覚過敏が観察される結果を得た。しかしながら、脳内において HMGB1 が如何にして痛覚過敏の発症に寄与するのかは全く不明なままであった。そこで、本年度は慢性疼痛時の脳内における HMGB1 の役割を詳細に検討する。各種濃度の HMGB1 を脳室内へ投与し、痛覚過敏の発症に対する影響を検討した。その結果、HMGB1 は当初予定した濃度よりも低濃度から疼痛を惹起し、生体内疼痛制御機構に関与するいくつかの脳部位においてミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞を活性化させることを見出した。また、本検討において使用した HMGB1 の投与濃度に関しては、パーキンソン病などの神経変性疾患や、脳卒中などのモデル動物の過去の報告から病態時の脳内においても十分に観察されることが推察できる濃度であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、痛覚過敏を惹起させる HMGB1 脳室内投与濃度を決定し、その際に活性化する脳部位及び細胞種を特定した。しかしながら、予想以上に HMGB1 投与濃度の決定に時間を費やしたため、当初予定していた HMGB1 が作用する受容体の特定までを行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
脳内 HMGB1 が疼痛を惹起させるために必要な受容体を特定することと、化合物ライブラリのスクリーニング系の構築を並行して行うことにより、本年度の遅れを取り戻せると考えている。 スクリーニング系の構築後、化合物ライブラリから治療薬候補化合物の探索を進めていく。
|