研究課題/領域番号 |
18H06114
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
濱野 展人 東京薬科大学, 薬学部, 嘱託職員 (80708397)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | 超音波イメージング / セラノスティクス / がん治療 / マイクロ流体技術 |
研究実績の概要 |
セラノスティクスとは、治療と診断が一体化したシステムであり、近年、がん病巣を診断しつつ治療を行なう事が出来る次世代型高精度医療システムになり得ると期待されている。本研究では、臨床において診断や治療で既に用いられている超音波にナノ粒子を組み合わせることでがんのセラノスティクスの構築を試みる。本年度は加温によりCO2が発生する化合物を含んだナノ粒子の作製法確立に向けて検討を行った。本申請研究を遂行する上で必要な粒子サイズとして、がんの深部まで到達可能な粒子径である30-50 nm程度を目標に作製した。リン脂質であるDSPC、コレステロール、PEG脂質とPBSを用いて作製したところ、およそ50 nmのナノ粒子が作製できた。次に加温によりC02を産生させるため、炭酸水素アンモニウムをナノ粒子を作製する際のバッファーとして用いた。結果はPBSを用いて作製した場合と異なり、マイクロオーダーの粒子となった。この結果はナノ粒子作製時に65℃条件で作製したため、粒子が形成される過程でCO2が発生したためサイズが増大したことが考えられる。この結果から、ナノ粒子作製時において常温もしくは体温程度で作製することが良いということが示唆された。現在、相転移温度が体温以下もしくは体温付近を有するリン脂質 (DOPC, DMPC, PMPC, MPPC)を中心に脂質組成の最適化を進めている。最適化に並行し、CO2を産生させるバッファーを用いて検討を行う予定であるが、バッファーの最適化も併せて行う予定である。 ナノ粒子作製後は実際に加温によるCO2の産生を超音波造影装置にて検出し、動物実験に向かう予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PBSを用いたナノ粒子作製法ではがん組織に送達しうるサイズを有したナノ粒子は作製できたものの、加温によるCO2産生が想定より急激に起こったため、CO2産生能を有したナノ粒子の開発には至らなかった。この現状から『やや遅れている』とした。しかしながら、ナノ粒子を作製する際の最適温度条件が示唆されたこと、また加温によるCO2産生が比較的速やかであることが予想できたことから、今後のCO2産生ナノ粒子の作製法確立及びナノ粒子のCO2産生能に関してある程度の期待は持てることが示唆される。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度もがん組織へ到達可能なサイズ (30-50 nm程度)とCO2産生能を有するナノ粒子作製法の確立を目的とし検討を行う。これまでの結果からサイズ制御とCO2産生には温度が重要であることが分かった。60℃前後の高温では速やかにCO2が発生してしまい、結果としてサイズが大きくなったことから、ナノ粒子を作製する際の温度条件として体温付近に設定しナノ粒子の作製を行う。相転移温度が体温以下もしくは体温付近を有するリン脂質 (DOPC, DMPC, PMPC, MPPC)を中心に、これら脂質を組み合わせて作製することで作製法の確立を目指す。脂質組成の最適化に並行し、CO2を産生させるバッファーの種類にも着目する。CO2を産生させるバッファーとしてはじめに炭酸水素アンモニウムを用いて検討するが、脂質組成に伴うサイズを考慮し、炭酸水素ナトリウムなども候補に挙げて検討を行う予定である。ナノ粒子作製後は実際に加温によるCO2の産生を超音波造影装置にて検出し、担がんモデル動物を用いた検討を行う予定である。
|