本代表者らはプロドラッグ型siRNA分子である2'-O-メチルジチオメチル(MDTM)修飾核酸を開発してきた。本分子は細胞内を模した還元環境下で2'-O-MDTM修飾が除去され、天然型のRNAへの変換が可能である。一方、既存の修飾核酸である2'-O-メチル修飾核酸では高いヌクレアーゼ耐性と炎症性副作用の回避が期待されるものの、RNA干渉効果は天然型のsiRNAと同等以下であることが問題とされる。本研究では本分子を用いた生体内での十分な活性と核酸投与による炎症性副作用の回避の両立が可能な 2'-O-メチルジチオメチル修飾siRNA (MDTM-siRNA) を開発することが目的である。平成30年度には修飾オリゴ核酸合成前駆体の合成効率の向上とオリゴ核酸合成後修飾法によるMDTM-siRNAの合成に取り組んだ。令和元年度では生物学的効果を検証するためにヒト肝がん由来細胞を利用したsiRNAを利用したRNA干渉実験を行った。 siRNAを構成する二本鎖のうち、標的とするmRNAと同じ配列を有するセンス鎖への修飾は比較的認容されるため、修飾位置の制約を受け易い相補鎖のアンチセンス鎖の修飾によるRNA干渉への影響を検討した。MDTM-siRNAを用いてRNA干渉実験を行う前に、既存の修飾siRNAである2'-O-メチル修飾 23 mer siRNAを用いて、配列中の修飾位置の選定を行った。アンチセンス鎖に3連続の2'-O-メチル修飾を含むsiRNAを用いたところ、5'-末端から数えて1-3、13-15、15-17 番目の修飾で天然型siRNA よりも低いノックダウン活性を示した。特に修飾の影響を受けやすいシード領域上の1-3番目をメチル修飾したsiRNAのノックダウン活性は天然型siRNAの10%程度しか得られなかった。本代表者らはMDTM-siRNAのノックダウン活性が天然型siRNAと同等以上の活性を有する知見を持っており、今回得られたメチル修飾によってノックダウン活性が低下する位置に2'-O-MDTM修飾を施することで高いノックダウン活性と炎症性副作用の回避が期待される。
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